米国最大の都市ニューヨーク市(NYC)は、薬物依存症の人々を救うためにハームリダクションの考えによる監視の下で違法薬物を使用できる施設を11月30日に全米で初めて公的に認め、OnPoint NYC社がニューヨーク市内に2箇所開設しました。
OPC(Overdose Prevention Center:過剰摂取防止センター )と呼ばれる施設では、清潔な注射針の提供をすることで感染症を防いだり、人のいないところで薬物を摂取するのではなく施設に来てもらうことで過剰摂取を防いだり、様々な相談に乗ることが可能になり、医療の提供、依存症の治療、社会的支援につなげることが期待されています。
ニューヨーク市、全米初の違法薬物使用施設の開設を発表
開設から3週間が経過した12月21日、3週間で少なくとも59件の過剰摂取を回避して怪我や死亡事故を防いだことをニューヨーク市がプレスリリースで発表しました。また、同施設の利用回数は2,000回を超えています。
ニューヨーク市保健局長官のデイブ・チョクシ(Dave Chokshi)氏コメント
この結果は有望であり、この施設が必要のない苦痛と回避可能な死を減らしていることを示しています。シンプルな真実は、同施設が私たちの隣人、家族、愛する人たちの命を救うということです。ニューヨーカーの健康を守るために、この重要なサービスを開始してくれたOnPoint NYCに感謝します。
OnPoint NYCエグゼクティブ・ディレクター、サム・リベラ(Sam Rivera)氏コメント
私たちは、薬物を使用している人々の人生の旅の途中で出会うことで、彼らが自分の価値を高められるようサポートしています。人生を祝福することで、人間として扱われないことが多い人々を人間らしくします。
OnPoint NYCでは、愛を持ってケアが行われています。スタッフはとても忍耐強く、思いやりがあり、利用者に尽力しています。利用者が抱えているトラウマはとても深いもので、その痛みを癒すには時間がかかります。多くの人にとっては、非常に長いプロセスとなります。
初期のデータによると、同施設は目的通りの方々に対してすでに効果を発揮しています。私たちは、利用者が薬物を使用し最も弱い状態にある時に働きかける勇気を持っています。彼らが準備ができたときにそこから抜け出せるという信念と証拠を持って接しています。
このような重要な仕事をさせていただけることを光栄に思うと共に、近々、全米に同施設が開設されることを楽しみにしています。
また、ニューヨーク市保健委員会は、薬物使用に対するハームリダクションアプローチの効果を裏付ける証拠と共に薬物過剰摂取による死亡を防ぐための行動を取る必要があると声明を発表。
米国連邦政府とニューヨーク州政府に対し、同施設を支援するよう要請を行いました。
nychealthy(ニューヨーク市保健局)ツイート日本語訳
ニューヨーク市に新設されたOPC(Overdose Prevention Center:過剰摂取防止センター )は、3週間前に開設されて以来、少なくとも59件の過剰摂取を回避し、2,000回以上の利用がありました。同施設は、薬物を使用している人が臨床ケアやサービスを受けられる安全で清潔な場所です。
Since opening three weeks ago, NYC's new Overdose Prevention Centers (OPCs) have averted at least 59 overdoses and have been used over 2,000 times. OPCs offer safe, clean places where people who use drugs can access clinical care and services.
— nychealthy (@nycHealthy) December 21, 2021
Learn more: https://t.co/85JHFXKkls pic.twitter.com/uD6NPuJJt9
米国保健福祉省のトップであるザビエル・ベセラ(Xavier Becerra)長官は最近受けたインタビューの中で、薬物依存症の人々を救うために「待っていられないところまで来ている」と述べ、違法薬物使用施設を容認することを示唆しています。(インタビュー後、保健福祉省の広報担当者によって現在進行中の訴訟の問題であると発言を撤回)
バイデン政権、監視下での違法薬物使用施設の設置を容認する発言を行う
米国にはクラックハウス法と呼ばれる連邦政府によって規定された法律があり、規制物質法によって禁止されている物質の製造、流通、使用を目的とした場所を故意に開設、賃貸、賃借、使用、維持することを重罪としています。
フィラデルフィア市が薬物使用施設を開設しようとした際には、米国司法省が開設を阻止するために訴訟を起こしました。現在もこの訴訟は続いていますが、ニューヨーク市長は「命を救うことがより重要である」と述べ、同施設は開設されました。
米国司法省から訴訟を受けているフィラデルフィアの団体「セーフハウス(Safehouse)」は、政府の本件に関する回答期限が2022年3月7日まで再度延期されたことを12月22日に発表しています。