100m走最速女王シャカリ・リチャードソン選手の騒動を受けて

まずは、今回アメリカで大注目され議論されているシャカリ・リチャードソン(Sha’Carri Richardson)選手のニュースをご存知のない方に向けて、ニュースを時系列で振り返ります。

 
 

代表選考会で優勝
オリンピック出場決定

6月19日にオレゴン州で行われた米国代表選考会女子100m走で優勝しオリンピック出場決定

 
 
 
 

薬物検査で陽性
東京オリンピック出場取消

薬物検査で大麻成分THCが検出され、資格停止処分となり東京オリンピックの出場が消える

 
 
 
 

本人がインタビューで
大麻の使用を認める

代表選考会2日前に母の死を知り、ショックから辛い気持ちを和らげるために使用したことを告白。「何をすべきか、何をしてはいけないかを知っているが、それでもこの決断をした。言い訳はしない。」と自身の言葉で語る。

 
 
 
 

多くのアスリート、著名人、政治家が彼女の支持を表明

彼女の告白後「大麻に運動能力を高める効果はない」「大麻を合法である場所で使用して五輪出場資格を奪うのはおかしい」と批判が米国中から殺到し、SNS等で多くの議論がされる

 
 
 
 

全米陸上競技連盟、ホワイトハウス、米アンチドーピング機関がルール変更を示唆

批判の声は大きく、騒動は大きな広がりを見せる。それを受けて、各団体、政府機関、バイデン大統領に至るまで意見を求められ「ルールは、ルール。だが、そのルールが正しいかどうかは違う。」と再考すべきとそれぞれが答える。

 
 
 

 

155センチというアスリートとしては小柄ながらも100m走女子最速で、オレンジ色の長髪をなびかせて走る選手として人気があるシャカリ・リチャードソン選手。

世界アンチドーピング機関(WADA)は大麻成分THCをドーピング違反物質に入れており、その規定通りにシャカリ・リチャードソン選手は試合後のドーピング検査後に資格停止処分を受け、東京オリンピック出場取消となりました。

彼女は、選考会直前の母親の死を受けて悲しみに暮れ、精神的に落ち込み、悲しみの気持ちを和らげるために大麻を使用したことをインタビューで告白。

インタビュー映像はこちら – 音声英語・日本語字幕なし)

 

そんな彼女に対する世間の反応は、どうだったか?

世間の反応が良く分かるのが彼女が直後にした「私は人間」というツイート。7月9日現在いいねが56万件を超えています。

 

「大麻が医療用も嗜好用も合法であるオレゴン州で、合法な大麻を使用したことは悪いことではない」

「運動能力が大麻によって上がる効果はないのだから、彼女をオリンピックに出場させるべき」

このような内容を一般人のみならず、アスリートや著名人、政治家など多くの人が発信しました。

そして、その世論に動かされるように、ホワイトハウスや全米陸上競技連盟(USATF)、米アンチドーピング機関(USADA)、そして大麻合法化反対派であるバイデン大統領までもがルール変更を示唆しました。

世界アンチドーピング機関(WADA)の定めているドーピング違反物質リストは主に競技力が向上する物質ですが、大麻のように競技力向上とは関係のない物質の場合でもアスリートが健康上の安全性を損なうことを考えてリスト入りさせています。

しかし、アメリカ連邦法では大麻は健康を損なう危険物質となっており違法ですが、州ごとに法改正を行い、大麻は現在健康上の問題を抱えている人が治癒のために処方をされ医療用大麻を使用したり、息抜きのための嗜好用途で合法的に使用している現状があります。

 


 

シャカリ・リチャードソン選手のドーピング違反による東京五輪取消のニュースが流れてきた時には、あぁ、またやらかした選手が出たのか。くらいに感じていました。

しかし、日を追うごとにどんどん大きなニュースになっていく様子、そして現在合法の州、非合法の州、関係なく大麻擁護派が堂々と発信を行なっている様子を見て、自らの意志をハッキリと伝える米国の文化、議論を行う環境がうらやましくも感じました。

日本では、「ルールはルール」「ルールは守るもの」という意識が強すぎて、「このルールって今の時代も正しいの?」という議論がとてもしづらく感じます。

日本は、民主主義のはずです。

民主主義とは、簡単に言うと「みんなのことは、みんなで話し合って決める」です。

しかし、現状は以下に類似したやりとりをよく見聞きしてきました。

 

 

大麻は、合法化するべきだと思う!

 
 

法律は守れ!法律が変わってから言え!

 
 

その法律が本当に正しいかを議論したい。

 
 

国が考えて、正しいから法律になってる。

 

国が決めたことを全て正しいとするのは、独裁政治のような気がしてなりません。

私が本来あるべき姿だと思うのは、意見が出し合える寛容さのある社会です。

何が正しいのかに関してはどの目線で見るのかなど、人それぞれ意見が違うこともあるでしょう。

黙っておくのが日本人の文化。とても分かります。時には、その方が良いでしょう。

しかし、議論なきまま黙ったまま、意見をすることが悪という社会は息苦しくして仕方ありません。

大麻がどうかということよりもまず、意見を皆がしやすい社会になってほしいと願います。

 

Where there’s a will, there’s a way.

意志あるところに道は開ける。

 

石井 竜馬

麻マガジン創設者兼編集長。標高1,000mの山の中で井戸を掘り、湧き水と共に家族で農的暮らし。珈琲焙煎士でもある。ヨガ歴20年。ワクワクするスタートアップにシードからレイターまで投資ラウンド問わず投資したいため、起業家との出会い募集中。

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