2022年4月9日、PTSDモデルのマウスに対し、CBDが抗うつ薬であるセルトラリンよりも優れた治療効果を示した論文が、中国の研究者らにより発表されました。
PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、強い恐怖感を伴うトラウマ体験をした後、その光景・体験がフラッシュバックしたり、それに付随して様々な精神症状がみられる疾患です。
薬による治療は、セルトラリンやパロキセチンといった抗うつ薬(SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やベンゾジアゼピン系抗不安薬により行われますが、治療効果が十分にみられない場合もあり、完治に至るケースは多くありません。
そんな中、PTSDにおける恐怖記憶や精神症状において、エンドカンナビノイドシステムが重要な役割を果たしていることが明らかになってきています。
CBD(カンナビジオール)はエンドカンナビノイドの量を増やす作用に加えて、セロトニン受容体に働きかけることで抗うつ作用や抗不安作用をもたらすことが明らかになってきているため、PTSDの新たな治療戦略として期待が寄せられています。
今回の研究では、PTSDモデルのマウスに対し、CBDとセルトラリン(SSRI)を投与し、その効果が比較されました。
その結果、CBDは恐怖記憶と不安行動を減弱させ、社会的相互作用行動を増加させました。
CBDが行動テストの前・中・後のいずれの投与でも効果を示したのに対し、セルトラリンはテスト前の投与のみでしか有効性が認められませんでした。また、CBDは恐怖記憶の固定化、想起、増強を減少させましたが、セルトラリンでは恐怖記憶の想起を減少させる効果しか認められなかったと報告しています。
ただし別の研究では、事前にマウスにCBDを投与することで、恐怖条件付け後に恐怖関連症状の増悪が認められています。
また2021年に公開されたスペインの研究では、PTSDモデルのマウスに対し、セルトラリンとCBDを併用することで、それぞれを単独投与するよりも高い治療効果がみられたと報告されています。
今回の研究は、これらの中の新たなエビデンスの1つとして加わるような形となり、今後の研究に引き続き期待が持たれます。