カンナビス製品の成分表示とその問題点

カンナビス製品の成分表示とその問題点

今、世界では少しづつカンナビスに関する規制緩和が進んでおり、日本でも様々なカンナビス関連商品が登場してきています。

しかし、世界の多くのCBD製品とその原料となるカンナビノイドやテルペンには品質に関する明確な基準が設けられておらず、その品質は製造を行う会社の自助努力に委ねられているのが現状です。

日本で販売されている多くのCBD製品は、アメリカで抽出されたCBDが輸入され原料として使われていますが、実はアメリカでFDA(食品医薬品局)が認可しているCBD製品は、てんかんの発作の抑制に使われる医薬品「エピディオレックス」だけです。

世界で最も権威のある医学会の一つである米国医師会(American Medical Association)が発行する臨床雑誌「JAMA(the Journal of American Medical Association)」に掲載された新たな研究によると、オンラインや店頭で購入できるCBD製品の多くは、ラベルに記載されている量のCBDやその他のカンナビノイドを含んでいないという結果が発表されています。

また精神活性作用のある成分(THC)が含まれていないと記載されているにも関わらず、THCが検出されている例も少なくないようです。

「The Science of the Total Environment journal」に掲載された516点のCBD製品に関するリサーチによると、ラベルに表記された数値に近い量のCBDが含まれていたのは僅か42%に過ぎず、残りの58%は記載された数値から大きく外れていたという調査結果が発表されています。

通常は表記されている値から10%前後が許容範囲とされていますが、前途の58%の製品の内40%はラベルに記載されている数値の90%以下しか有効成分が含まれておらず、残りの18%は記載されている数値の110%以上の有効成分が含まれていました。

重金属の混入

大麻という植物にはいわゆる生体内濃縮蓄積器のような特徴があります。

土壌に含まれている重金属などの汚染物質を吸収しやすく、それらが植物の体内に少しづつ蓄積されていきます。

そのため「CBD製品に貼られるラベルや成分表示の数値は正確性が非常に重要である」と「The Science of Total Environment」に掲載されたリサーチの中でも述べられており、上記の研究者が行った516点のCBD製品に関するリサーチの中では42%から鉛が、37%から水銀、28%からヒ素、8%からカドミウムが検出されました。

検査の対象になったほとんどの製品には微量の重金属しか含まれていませんでしたが、4種類の製品からはカリフォルニア州が推奨する1日の鉛消費量の上限を超える値が検出されました。

また多くのエディブル製品から、プラスチックを柔らかくするために使われるフタル酸エステル類も低濃度で検出されています。

フタル酸エステル類はプラスチックから溶け出し、大気、土壌、水中に広く存在しており、 一部のフタル酸エステル類は動物の生殖系に影響を及ぼしていますが、人間の健康への影響はまだ明らかになっていません。

「食用CBD製品の重金属やフタル酸エステル類による汚染は蔓延しています。またCBD製品に貼られているラベルと、実際に測定された含有量との間にはかなりの不一致があり、消費者の健康を守るためには厳格な規制が必要である」と、研究者は結論付けています。

日本で起こった成分非表示問題

日本でもあるベイプ製品の成分表記について問題となる事態が発生しました。

その製品の説明内容と成分表記には実際に使われているカンナビノイドが全て表記されておらず、この事についてツイッター上でも一部のユーザーが議論していました。

ツイートの中にはその製品の使用から発生したという健康被害を訴えるものもあり、訴訟問題に発展してもおかしくない事態であったといえるでしょう。

その製品を作る会社は、自社で製造販売している商品に実際に使っている全てのカンナビノイドを表記しておらず、中でもHHCPという安全性について多くの疑問が残ると言われている成分を使用し、それを隠していたという事について多くの疑問の声が上がりました。

全ての成分を記載しなかった販売側の理由としては「原材料のレシピは企業秘密であるため公開できない」また「正確な原材料名を記載してしまうとコンプライアンスなどの問題でBASEなどのECサイトで販売ができなくなるから」というものでした。

カナダやアメリカなど大麻の合法国でも、カンナビス製品を販売する場所に関しては厳しい規制を設けていますが、同じ様にこの様な問題が起こっているのでしょうか?

カナダのカンナビス製品でもあった不良成分表示

2022年4月にカナダで起きた不良ラベルに関する事例を振り返ってみると、アメリカと同様にカナダでもラベルに表示されている成分含有量の不正確さが指摘されています。

このとき問題となったのはエンブレムカンナビス社の「Emblem Cannabis CBD 100 Cannabis Extract(30mL)」という商品ですが、これも頻繁に起こっている含有量に関する表記が間違っていた事が原因によるリコールの一つです。

ヘルスカナダ(カナダ保健省)のホームページを見てみると、同様の問題で数多くのカンナビス製品がリコールにより全品回収に至っている事がよく分かります。

それではなぜ含有量が大きく違っていたら良くないのでしょうか?

含有量が足りずに問題になることは理解できますが、余分に含まれていた場合どんな問題があるのでしょうか?

薬物相互作用の可能性

多くの専門家が製品に含まれるCBDの量が抗生物質、血圧の薬、コレステロールの薬、鎮痛剤など服用している処方薬と相互作用を起こす可能性があると懸念しています。

カリフォルニアにある医療大麻教育センターの創設者であるCorroon氏は、正確な成分含有量が表記されているCBD製品は、正しい用法用量で使用している限り健康に関するリスクは極めて低いと述べています。

しかし同時に「それでもリスクは存在する」とも付け加えており、薬物相互作用がCBDが体内で代謝される時に起こる可能性があると示しています。

CBDは酸化還元酵素ファミリーのひとつであるシトクロム(CYP450)という酵素によって代謝されます。

さらにCYP450ファミリーの中にはCYP3A4という酵素があり、この酵素が処方薬の薬60%の代謝に関わっているのですが、CBDがそのCYP3A4に干渉してしまい、体内での分解を阻害する可能性があります。

分解が遅くなっている状態で普段通りのペースで処方薬の服用を続けていると、体内に処方薬の成分が必要以上に蓄積してしまい、不要で有害な副作用につながる可能性があります。

医療目的でカンナビス製品を使う人は少なくはなく、製品を作る企業はそういった人々を健康被害から守るという責任があり、それがカンナビス製品に正確な成分表示が求められる理由の一つになっています。

Shinji

カナダ在住。大麻メディア兼大麻関連事業コンサルティングCJC Advisory Networkの創設者。同社は日本を拠点とするCBD企業と国際的なパートナーや投資家のネットワークとしても機能する。

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