症状が出現した頃には進行がんとなっていることが多く、周辺臓器やリンパ節に転移や湿潤を認めやすく、予後不良となることの多い悪性腫瘍「膵臓がん」。そんな膵臓がんに対する、新たな希望の光です。
2022年7月22日、膵臓がん細胞を移植したマウスに対し大麻抽出物が抗がん作用を示したことがタイの研究者らにより報告されました。
この研究ではヒト膵臓がん細胞株(Capan-2)を25匹のマウスに皮下移植し、①ごま油投与群(対照群)、②フルオロウラシル(5-FU:膵臓がんで使用される抗がん剤の1つ)投与群、③〜⑤THC(テトラヒドロカンナビノール):CBD(カンナビジオール)=1:6の大麻抽出物1mg/kg投与群、5mg/kg投与群、10mg/kg投与群の5グループに分け、膵臓がんに対する大麻抽出物の抗がん作用が検証されました。研究期間は30日間。
その結果、各群において腫瘍の体積に有意差はなく、全群において増加が認められたものの、組織学的には(顕微鏡で見た結果では)5-FU投与群と大麻抽出物投与群は対照群と比べ腫瘍細胞のアポトーシス(細胞死)が多く認められました。大麻抽出物では10mg/kg投与群、つまり最高用量において最も多くアポトーシスが観察されました。
そのアポトーシス誘導能をカスパーゼ3(アポトーシス実行過程における中心的酵素)を指標として各群で比較。5-FU投与群、5mg/kg・10mg/kgの大麻抽出物投与群は対照群よりもカスパーゼ3が有意に多く出現していました。
また、腫瘍の抗増殖能の評価にはDNA合成時に生じるPCNA(増殖細胞核抗原)を指標として使用。5-FU投与群、大麻抽出物投与群(全用量)は対照群と比べ著しくPCNAが低かったことが報告されました。
まとめると、今回使用された大麻抽出物は用量依存的に膵臓がん細胞のアポトーシスを誘導し、増殖を減少させたということになります。
今後の研究ではTHCとCBD以外のカンナビノイドやテルペン、フラボノイドなどの膵臓がん細胞に対する抗がん作用や、5-FUと大麻抽出物との相乗作用を検証していく必要があると研究者らは述べています。