12月14日、大麻成分CBDが虫歯の主な原因菌である「ストレプトコッカス・ミュータンス」に対し殺菌・予防効果を示したことがイスラエルの研究者らにより報告されました。
CBD入りの歯磨き粉はすでに日本でも流通しており、使用したことがある人もいるかもしれません。この状況からも分かるように、虫歯に対するCBDの有望性が報告されたのは今回が初めてではありません。
例えば2020年、ベルギーの研究者らはCBDを始めとしたカンナビノイド(特にCBNとCBC)が市販の歯磨き粉よりも歯垢(プラーク)内の細菌数を減少させたこと、さらにCBDあるいはCBGを配合した洗口液がクロルヘキシジンを含有した洗口液と同等の殺菌作用を示したことを報告しています。
本題に入る前に、今回の報告内容を理解しやすいよう、虫歯がどのようにして起きるのかを簡単に説明します。
私たちの口の中には驚くほどの常在菌が存在し、その数は歯磨きを頻繁に行う人でも1000〜2000億と言われています。唾液には自浄作用があることもあり、通常これらの細菌が悪さをすることはありません。
ですが、ストレプトコッカス・ミュータンス(以下、「ミュータンス菌」と記載)は違います。虫歯菌とも呼ばれるこの細菌は歯に残った糖をエサとし、歯の表面にヌメリをもたらしてバイオフィルムを形成します。
バイオフィルムとは細菌の集合体のこと。台所や排水溝のヌメリがまさにそれで、これが口の中でも作られるということになります。その代表例が「歯垢(プラーク)」です。
バイオフィルムの厄介なところはバリア機能を持っているところ。これにより唾液の殺菌作用が通じなくなるどころか、歯磨き粉もいまいち効果をなさなくなり、ミュータンス菌はどんどん繁殖。ミュータンス菌は酸を出し、徐々に歯を溶かしてしまうため、これにより虫歯が誕生してしまいます。
今回の研究は、このミュータンス菌に焦点を当ててCBDの有効性を検証したものになります。
検証の結果、CBDはミュータンス菌の増殖とバイオフィルムの形成を抑制することが明らかに。また、口の中が酸性に傾くことを防ぎ、中性を保つ働きがあることも分かりました(虫歯ではミュータンス菌が出す酸により酸性に傾く)。
CBDはすでに形成されたバイオフィルムに対しても有効性を示し、その効果はCBDをきれいに洗い流してからも48時間は持続していました。
続いてCBDの予防効果を検証した結果、事前にCBDで培養プレートをコーティングすることにより、ミュータンス菌の増殖やバイオフィルムの形成が抑制されることも明らかとなりました。
これらの結果はCBDが虫歯の治療や予防において有望であることを示しています。
ですが、今回のものを含めこれまでに報告された虫歯に対するCBDの有効性は試験管内で検証されたもののみとなっているため、実際に人に使用することで有効なのかはまだ分かりません。そのため、今後は人を対象とした治験が待ち望まれます。