カナダの大麻企業、研究目的でコカインの製造・販売が認められる

カナダのブリティッシュコロンビア州に拠点を置く大麻企業「アダストラ・ホールディングス（Adastra Holdings）」は、研究目的でのコカインの製造や販売などがカナダ保健省から2月17日に認められたことを発表しました。

同社は2022年8月に、1,000gまでのシロシビンとシロシンの所持、製造、販売、流通を認めるライセンスも取得しています。今回このライセンスにコカインが加えられることになり、250gまでのコカインの所持、製造、販売、流通が可能となりました。

このライセンスは「ディーラーズ・ライセンス（dealer’s license）」と呼ばれるもので、臨床および科学研究のための販売を可能にするもの。つまり、一般の人々に販売することを認めたものではありません。

この発表は始め、あたかも一般販売が開始されるかのように表現されていたため、ジャスティン・トルドー首相をも驚かせるほどの騒動に発展。そのため、同社はその後すぐに、一般消費者に販売しないことを声明で明言しています。

ライセンス認可にあたり、アダストラ社のCEOであるマイケル・フォーブル氏は「ハームリダクションは極めて重要かつ主流なテーマであり、私たちはあらゆる薬物規制の最前線に立ち続けています」と述べています。

フォーブル氏はメサドン（オピオイドやヘロイン中毒の治療に用いられる薬）を取り扱う薬局を経営し、そこで薬剤師として依存症治療の最前線で活躍した経験を持ちます。また、2010年には、疾病予防センターの指示により、注射薬常用者に未使用の清潔な注射針を提供し、HIVやC型肝炎などの血液感染を予防するためのプログラム（Needle Exchange Program）を実施しています。

なお、このようなプログラムを実施した米国ワシントンD.C.では、静脈内薬物使用に関連するHIV感染が120件予防され、4,560万ドル（約62億円）の治療費が節約されたという報告があります。また、このプログラムに参加した人は、依存症治療プログラムに参加する可能性が5倍高いという調査結果も出ています。

ブリティッシュコロンビア州では、2023年1月31日より、一部の薬物（オピオイド、コカイン、覚醒剤、MDMA）を非犯罪化する3年間のトライアルを実施しています。

このトライアル実施にあたり、カナダのメンタルヘルス・依存症担当大臣であるキャロライン・ベネット氏は「あまりにも長い間、ハームリダクションに敵対する政治思想により、多くの命が犠牲となってきました」「私たちは、命を救うためだけでなく、薬物を使用する人たちに尊厳と選択肢を与えるために、これを実施します」と述べています。

同州に拠点を置くバイオサイエンス企業「サンシャイン・アース・ラボ（Sunshine Earth Labs）」は、アダストラ社と同じように、昨年コカインとMDMAのディーラーズ・ライセンスを取得。2023年1月には、ヘロインやモルヒネなどのオピオイドもこのライセンスで認可されたことを発表しています。

同社は声明の中で「非犯罪化だけでは十分でない可能性がある」と述べ、薬物による死亡を防ぐために、純度や量が保証された薬物を購入する機会を提供することを提案する専門家がいると指摘しています。

2月16日、同州に拠点を置くナスダック上場企業「ルーシー・サイエンティフィックディスカバリー（Lucy Scientific Discovery）社」は、カナダ保健省にコカインとヘロインの製造許可を求める申請書を提出したことを発表しています。