大麻ときのこの相乗作用が大腸がん細胞の90%以上を死滅させたと報告

大麻ときのこの相乗効果によって大腸がん細胞の90%以上が死滅

2022年3月、Cannabotech社により開発された大麻ときのこの抽出物をベースとした製品が大腸がん細胞の90%以上を死滅させたことが報告されました。

Cannabotech社はイギリスの企業であり、大麻由来の成分であるCBD(カンナビジオール)と様々なきのこ(キクラゲ、エリンギ、しいたけなど全14種類)の抽出物を組み合わせた製品を開発・販売しています。

このうち「Integrative-Colon」という製品において、大腸がん細胞株を90%以上死滅させるほどの抗がん作用が認められました。この抗がん作用はカンナビノイド単体よりも有意に高く、カンナビノイドときのこ成分との間で強い相乗作用がもたらされたことが示されました。

なお、「Integrative-Colon」にはカワラタケに含まれるPSK(ポリサッカライドK)という成分が高濃度で含有されており、この成分も抗がん作用を有することで知られています(日本を中心としたアジアにおいて用いられています)。

同社は今後「integrative-Colon」と化学療法との併用による有効性を検証していく予定だと発表しています。

なお、大腸がんに対するカンナビノイドの有効性については最近様々なことが報告されています。

今年5月18日に公開されたアメリカの論文では、CBDがCB2受容体への作用を通して大腸がん細胞株の生存率を低下させたことが報告されました。さらに大腸がん細胞株に対する抗がん作用はCBDだけでなく、CBG(カンナビゲロール)、CBGV(カンナビゲロバリン)、CBDV(カンナビジバリン)、CBL(カンナビシクロール)といった精神活性作用を持たない他のカンナビノイドにおいても認められました。

さらに5月31日に公開された中国の論文では、大腸がん細胞株におけるCB1受容体の活性化がEGFR(上皮増殖因子受容体)をダウンレギュレート(受容体の減少や感受性の低下)させることによりM2型マクロファージを抑制したことが報告されました。

EGFRは大腸がんの増殖と関連しており、大腸がんが進行すると多くの人で過剰発現が認められます。M2型マクロファージは抗炎症性サイトカインを放出し回復を促進する働きがありますが、腫瘍においては逆にがん細胞を守る作用が働いてしまいます。

つまりEGFRやM2型マクロファージに対し抑制的に働くCB1作動薬は、大腸がんの治療薬になる可能性を秘めているということになります。

昔から存在する大麻やきのこから摂れる自然由来の成分が、新たな医療の可能性を切り開いてくれるのかもしれません。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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