がん患者が医療用大麻を求める理由とは?

がん患者が医療用大麻を求める理由とは?

NY市がんセンターにおける観察研究

2022年6月3日、ニューヨーク市にあるメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターの医療用大麻クリニックに初診で訪れた患者に対し医療用大麻に興味を持った理由や経験を調査した論文が、医師らにより公開されました。

メモリアル・スローン・ケタリングがんセンターは米国国立がん研究所が指定する総合がんセンターの1つで、がんの予防、患者ケア、研究、教育に取り組む世界最古かつ最大の民間機関です。医療用大麻クリニックによる診療は2019年5月より開始されています。

今回の研究では、このがんセンターに初診で訪れたがん患者163名に対し調査が行われました。

がんの種類は肉腫が最も多く(22%、36名)、次いで消化器系のがん(16%、26名)で、58%(95名)がステージⅣの進行がんでした。56%(91名)ががん治療を受けており、最も多かった治療法は化学療法(87%、142名)でした。

これらのがん患者が医療用大麻に興味を持った理由として多かったのは睡眠(53%)・食欲(46%)・痛み(47%)・不安(46%)といった症状の改善でした。さらに、参加者の29%ががん治療として大麻に関心を抱いていました。

また、参加者のうち29%(48名)ががん治療としてCBD(カンナビジオール)に関心を持っており、これは特に40歳未満の患者よりも40〜60歳の患者において、また治療中でない患者よりも治療中の患者において観察されました。

さらにこの研究では、医療用大麻クリニックに受診する前のカンナビノイドの使用経験についても調査されました。

CBDの使用経験がある患者は40%(66名)で、報告された効果は多い順に痛み(21%)・不安(17%)・睡眠(15%)の改善であり、一方で30%は症状の改善がみられなかったと報告しました。大多数(92%)において副作用は認められず、ごく一部で報告されたのはのどの乾き、頭痛、ほてり、睡眠困難、高揚感でした。

THC(テトラヒドロカンナビノール)の使用経験がある患者は46%(75名)で、報告された効果は多い順に食欲(40%)・睡眠(32%)・吐き気(28%)・痛み(17%)の改善であり、症状の改善がみられなかったのは19%でした。副作用については51%(38名)が経験しており、最も多かったのは高揚感(40%)でした。

これらの結果から研究者らは、がんに携わる医療従事者はがん患者において大麻やカンナビノイドの使用が普及してきていることを認識し、大麻使用に関して患者とカウンセリングできるだけの知識やスキルを身につける必要があると結論づけています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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