脳腸相関と大麻のイラスト

CBDが脳腸相関を整え、パーキンソン病を改善する可能性

2022年3月22日、CBD(カンナビジオール)が脳腸相関を調節することにより、パーキンソン病に治療効果をもたらす可能性を示した論文が、中国の研究者らにより公開されました。

パーキンソン病は運動障害を主症状とした神経難病の1つです。体の動きを調節するドーパミンを放出する脳内(中脳黒質)の神経細胞が死滅していくことで、体を思い通りに動かせなくなり、最終的に寝たきり状態となっていきます。

このドーパミン神経細胞の変性は、レビー小体という異常なタンパク質のかたまりが形成されることにより生じます。他にも脳内における炎症や酸化ストレスも関与していると言われています。ですが、まだ根本的な原因は明らかになっていません。

その中で近年、腸内環境の変化も、パーキンソン病の原因として有望視されています。

腸は脳と相互に作用することから、第二の脳とも言われています(脳腸相関)。そして腸内環境を整えることにより、数々の病気を予防できることが明らかになってきています。例えばその1つに、うつ病が挙げられます。

パーキンソン病では、先行してうつ病を発症するケースが多いです。さらにパーキンソン病を発症する数年前から、多くの人に便秘もみられます。そしてレビー小体の形成や炎症所見は、脳だけでなく腸にも認められることが明らかになってきています。

これらのことから、パーキンソン病は腸から始まっているという考えが広まってきています。

大麻由来成分であるCBDは、以前パーキンソン病のコンテンツでもお話ししたように、抗酸化作用・抗炎症作用・エンドカンナビノイドシステムの調節により、パーキンソン病に対し有効である可能性が示されてきています。

またCBDやTHC(テトラヒドロカンナビノール)が脳腸相関を整えることも分かってきており、この作用が多発性硬化症アルコール依存症などの治療の一助となっている可能性も示されています。

今回の研究では、初期段階のパーキンソン病モデルのラットを用いて、パーキンソン病の原因と、CBDを三週間投与することによる治療効果が検討されました。

その結果、CBDはマウスの運動障害を有意に改善しました。病理学的初見でも、CBDを投与したマウスでは脳(中脳黒質)の神経細胞の萎縮が回復し、αシヌクレイン(レビー正体を形成する主なタンパク質)の凝集も防いでいました。

脳と糞便を解析した結果、パーキンソン病モデルのマウスの脳と腸において、代謝の変化が認められました。そしてCBDが、この脳腸相関の変化を調節することも明らかになりました。

今回の研究におけるCBDの治療効果は、主にこの調節作用によりもたらされたと、研究者らは述べています。

現在パーキンソン病に根治治療はなく、ドーパミンを補充する薬がメインとなっています。これらの薬はしばしば副作用が問題となり、長期に使用するのが難しいため、新たな治療方法が現在も模索されています。

一方、CBDは忍容性が高く、重篤な副作用もほとんど報告されていません。

もしかしたら今後、CBDが新たな治療戦略の1つとして、加わる日がくるかもしれません。

なお、2019年に医療用大麻を合法化したタイでは、医療用大麻の適応疾患リストにパーキンソン病が入っています。そして大麻の使用により、79.1%の人がパーキンソン病において治療効果を実感したと報告しています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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