ADHD患者、大麻使用で症状改善しQOL向上

2022年1月カナダにおいて、ADHD治療のために大麻を使用している患者3名に対しインタビューを行った論文が、Kargerに掲載されました。

※ADHD(注意欠如・多動性障害)とは

不注意・多動性・衝動性を主症状とする障害。子どもの頃に発症し、特に男児にみられることが多い。統計上小学校のクラスに1人はADHDの人がいると言われている。

ADHD患者3名ともに、大麻および大麻製品を使用することにより、症状の改善やQOLの向上がみられたと報告しています。

Aさんの場合

全般性不安障害も併発している23歳の男性。ADHDの治療薬の他に、抗うつ薬なども内服中。

ネットでADHDに大麻が有効であると知り、10代で初めて使用。集中力が高まるのを実感し、定期的に使用するようになった。

その後医師からCBDTHC=20:1の大麻(2回/日)の使用許可を受け、状況に応じてオイルや喫煙にて摂取するようになる。

彼は大麻を「治療薬を補う最高の助け舟」と表現。他者に対しオープンな気持ちになることができ、不安も少なくなり、感情的になることも少なくなったという。

大麻を使用する前について彼は「あちこち動き回ったり、飛び跳ねたりするような感じで、1つのことに集中できなかったんだ。仕事も3/4まで終えた時点でまた別の仕事を始めてしまったりとかね」と話す。

大麻を使用することにより集中力が改善し、仕事も効率的にこなせるようになっている。

Bさんの場合

小学校3年生の頃からADHD治療薬を使用していたが、薬が自分の人格を変えてしまう気がして嫌悪感を感じ、感情をコントロールするのが大変だった。

17歳のころにリチウム(気分安定薬)が処方されるとともに、家族のすすめでCBD:THC=20:1のオイルを使用するようになる。

寝る前にリチウム300mgと大麻オイルを1ml摂取することにより、リラックスし、集中できるようにもなり、自分らしさを感じられるようになった。これに加えて良質なサポート体制を受けることにより、彼は本当に人生が変わったという。

それまではやる気がなく、学校でもうまくやっていけず、精神病院にも入院したりしていた。けど大麻製品を使用するようになってから、リチウム以外の薬をやめることができたと話す。

現在彼はビジネスを運営しフルタイムで働くだけでなく、多くの友人もでき、社会生活の改善に成功している。

Cさんの場合

22歳の男性。20歳の時に診断を受ける。

家族が不安解消のために大麻の使用を検討していたのをきっかけに、自分もADHDの自己治療として大麻を使用するようになる。

大麻により自分を落ち着かせることができ、1つのことに集中できるようになり、夜も眠れるようになったという。

彼は他にもADHD治療薬や安定剤を服用していたが、大麻はこれらと相乗作用することにより、集中力・焦燥感・不安を改善し、感情をコントロールしてくれると話す。

大麻と出会うまでについて彼は「暴言が本当にひどく、大人の言うことなんて聞こうとしなかった。ものを置いた場所を忘れることが多く、しょっちゅう鍵や財布をなくしてたよ」と振り返る。

様々な大麻および大麻製品を試した結果、彼は高THC・低CBDのインディカ寄りのハイブリッドを好んでいる。サティバ種は若干の多動性をもたらし不安を増大させたが、インディカ有意のハイブリッドだといい感じにクールダウンすると話す。

現在はCBD:THC=0:18-19の大麻を寝る前に吸っている。THC濃度が高すぎると無気力になってしまうという。エディブルやオイルでは睡眠は改善せず、ベイプでは使いやすさから夜以外にも多用してしまうため、摂取方法は喫煙にしている。

※インディカ、サティバ、ハイブリッドとは

大麻草は品種によりインディカ種、サティバ種、ハイブリッド種の3種類に分けられる。

インディカはリラックス作用が強く落ち着く作用があるが、サティバは逆に高揚感により活動的になる作用があるとされている。ハイブリッドはインディカ種とサティバ種をかけ合わせた種のことをいう。

最近ではこれらのネーミングは適切ではないとする論文もある。

この論文では主観的な評価だけでなく、客観的な評価も行われ、3名とも精神状態の評価尺度において改善が認められています。

うつ病の評価尺度(PHQ-9)では8〜22ポイント(30〜81%)、不安のスコア(SCARED)では0〜27(最大33%)、感情コントロールの評価尺度(CEER-9)では2〜7(22〜78%)、不注意の評価尺度(SNAPスケール)では2〜8ポイント(7〜30%に該当)の改善が示されたと報告しています。

大麻による副作用は3名ともに報告されていますが、いずれも軽度なもので、のどの乾きや眠気、短期記憶障害などでした。

2008年2018年の症例報告でも、大麻由来製剤の使用により、ADHD患者の症状の改善やパフォーマンスの向上が報告されています。

以前までADHDは大麻使用のリスクファクターとして考えられていましたが、現在では自己治療のために大麻を使用しているのではないかという見方が強くなってきています。

2021年10月のアメリカの研究では、ADHDで大麻を使用したことのある学生1738名に対しオンラインアンケートを実施しています。

その結果、大麻は衝動性や多動性といった多くの症状に対し即効性があり、さらにイライラや不安といった治療薬による副作用も改善するといった回答がみられたと報告しています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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