ワシントン州の大麻規制当局であるワシントン州酒類・大麻取締局(WSLCB:Washington State Liquor and Cannabis Board)は、ヘンプ由来のCBDをデルタ9THCに変換することは、認めることができないと7月23日(金)に発表しました。
米国では、2018年にTHC(デルタ9THC)含有量が0.3%以下の大麻「ヘンプ」を「マリファナ」と区別し、ヘンプの栽培、抽出、販売をアメリカ連邦政府で合法化しました。
ワシントン州は州法で1998年に医療用大麻、2012年に嗜好用大麻を合法化しており、マリファナの生産、加工、販売に関しては免許制とし規制を行なっています。
今回問題となったのは、CBDを多く含むヘンプ由来のCBDアイソレート(CBDを単離抽出したもの)をデルタ8THCやデルタ9THCに変換する方が、マリファナを栽培してTHCを作るよりもはるかにコストが安く、規制する法律も存在していないため多くの人々がこぞって加工、販売を行なったためです。
それによって、免許を取得しマリファナ栽培、加工を行なっていた事業者の売上が下がり、今後を不安視する声が出ていました。
今回、そういったマリファナ事業者の声を反映し、ワシントン州酒類・大麻取締局がヘンプ由来のCBDをデルタ9THCに変換し販売することを禁じると発表しました。
しかし、取り締まる法律が制定、施行されている状況ではないため、どのように今後具体的に禁じるのか、どのような罰則になるのかは分かっていません。
現在、米国ではデルタ9THCの他にも、CBDをデルタ8THCに変換した商品が大ヒットし、需要と販売量は規制当局を驚かせ続けています。
デルタ8 THC(Δ-8 THC)とは?
Delta-8 THC(デルタ8THC)と呼ばれる大麻のカンナビノイドの一つ。
通常、THCと呼んだ場合は、Delta-9 THC(デルタ9THC)のことを指します。
名前も8と9が違うだけで非常に似ていますが、デルタ8 THCは、デルタ9 THCの異性体です。
異性体とは、化学上の式は同じですが、原子の配列が異なり、性質が異なる化合物のことです。(レゴでできた車があるとします。今度は、同じ種類・数のレゴで家を作ります。同じ物を使用しているのに、配置が違うことを異性体と言います。)
デルタ8の名前は、8番目の炭素鎖に化学結合があることが由来です。デルタ9は、その結合が炭素鎖の9番目にあります。
デルタ8 THCの効果
デルタ8THCは、多幸感、幸福感、鎮静、症状の緩和などを引き起こし、精神活性作用があり、ハイになるデルタ9THCに効果効能が非常によく似ていますが、効力はデルタ9THCよりも低いとされています。
ハイにならないCBD、ハイになるデルタ9THC、その中間のデルタ8THCと言われたりもしています。
デルタ8 THCと法律
2018年アメリカ連邦法によって、米国全土でヘンプが合法化され、栽培、抽出、販売を行えるようになりました。この法律では、ヘンプを次のように定義しています。
“成長しているかどうかに関わらず、デルタ9THC濃度が0.3%以下のすべての誘導体、抽出物、カンナビノイド、異性体、酸、塩、および異性体の塩。”
このヘンプの定義を見る限りは、デルタ9THCを含んでいないデルタ8THCは合法となります。そのため、州法でマリファナを違法のままにしている州でも販売がされています。
しかし、2020年8月、DEA(連邦麻薬取締局)はヘンプとそれ以外の大麻の違いを更新・確認するための文書である暫定最終規則(IFR)を発表しました。その暫定規則には、”合成的に派生したTHCはすべてスケジュールIの規制物質のままである “としており、CBDから加工したデルタ8THCは違法となります。
デルタ9THCが0.3%以下を認める法案が残るのか、すべてのTHCを禁止するDEAのIFRの文言が採用されるかによって、デルタ8THCの運命は決まります。
DEAのIFRは2021年10月まで審査が行われており、それまではデルタ8THCは連邦法上、合法です。
日本においては、デルタ9THC以外の異性体を含めたTHCを麻薬及び向精神薬取締法によって禁じています。