サイケデリクス(幻覚剤)の薬用利用を研究するジョンズ・ホプキンス大学に対して米国連邦政府から約400万ドル(約4億5000万円)の助成金の授与があったことをジョンズ・ホプキンス大学が発表しました。
ジョンズ・ホプキンス大学の発表によると、米国連邦政府がサイケデリクス治療の研究に助成金を与えたのは50年以上ぶりとのことです。
米国連邦政府の機関である米国国立衛生研究所(NIH:National Institutes of Health)はジョンズ・ホプキンス大学が行うタバコ依存症の治療法としてマジックマッシュルームに含まれる成分シロシビンを使用する研究に約400万ドルの資金を提供しました。ジョンズ・ホプキンス大学は、今回の大規模な3年間の研究をアラバマ大学バーミンガム校とニューヨーク大学と提携して行います。
今回の研究では、参加する3つの大学がそれぞれタバコを吸う人を募集し、無作為に2つのグループに分けます。
実験グループの被験者はシロシビンを服用した後、認知行動療法による禁煙治療セッションに参加します。もう一方のグループは、同じく認知行動療法を受けますが、参加前にプラセボ薬を服用します。
プラセボとは?
偽薬のこと。効果があると言われると効果が皆無のはずの薬を服用しても患者自身が効き目があると思い込むことで病気の症状が改善することがあります。これをプラセボ効果と呼びます。
薬の効果を検証する臨床試験ではプラセボ効果を差し引いて、本当の意味での薬の有効性を科学的に明らかにする必要があります。プラセボは見た目、重さ、味覚など本当の薬と区別がつかないように作られ、誰がプラゼボを服用しているかを患者、担当医師、薬剤師、看護師などに分からないように実施されます。
ジョンズ・ホプキンス大学医学部のマシュー・ジョンソン(Matthew Johnson)博士は、「この助成金の歴史的重要性は計り知れません。データには非常に説得力があり安全性も実証されているので、NIHがこの研究に資金を提供するのは時間の問題だと思っていました。シロシビンには現実的なリスクはありますが、コントロールされた環境では、スクリーニング、準備、モニタリング、フォローアップケアによって、これらのリスクは十分に軽減されます。」と述べています。
ジョンソン博士は、13年前にタバコの禁煙に対するシロシビンのテストを行う研究を開始。2014年に発表された予備研究では、従来の禁煙治療薬や治療法よりもはるかに良い結果が示されていました。
また、今回の研究では、シロシビンのセッションに加えて、認知行動療法(行動や精神の問題に繋がるネガティブな思考パターンをピンポイントで指摘することに焦点を当てた心理療法の一種であるトークセラピー)を行います。研究者は、シロシビンが長年の喫煙で定着した思考や行動の習慣パターンを断ち切り、禁煙を助けるのではないかと考えています。
シロシビンは、マジックマッシュルームに含まれる成分で、意識に深い変化をもたらします。準備やサポートと組み合わせることで、様々な依存症や精神疾患の治療に効果があると言われています。
サイケデリクスによる治療に関する研究はすべて民間の資金で行われてきましたが、今回は米国連邦政府の支援による研究となります。シロシビンを始めとする規制物質法のスケジュールIの物質による治療に関する研究を長年にわたって積極的に妨害してきた米国連邦政府の考え方は大きく変わってきたようです。