新型コロナによる味覚・嗅覚障害にエンドカンナビノイドシステムが関連か

新型コロナの味覚・嗅覚障害とエンドカンナビノイドシステムの関連性

- トルコの横断的研究

10月12日、新型コロナウイルス感染により味覚・嗅覚障害を発症した患者において血中のエンドカンナビノイドレベルが高かったことがトルコの研究者らにより報告されました。

新型コロナウイルス感染後の味覚・嗅覚障害は6〜8割が1ヶ月以内に回復すると言われていますが、約5%では長期化することが報告されています。

新型コロナウイルスによる味覚・嗅覚障害のメカニズムはまだ解明されていませんが、ウイルスが粘膜を介して神経を障害、あるいは神経周囲の細胞の破壊することによって発症する説や、単純に粘膜の炎症によって生じている説など、様々な説が存在しています。

大麻は主にエンドカンナビノイドシステムに作用することで様々な医療効果をもたらすと考えられています。エンドカンナビノイドシステムの1つを担うCB1受容体は脳を中心に発現していますが、においを感じ取る「嗅上皮」においても発現しており、この受容体の抑制がにおいの感受性を低下させたことが報告されています。

今回の研究では、新型コロナウイルス感染症から回復したものの味覚・嗅覚障害が残った患者20名(男性12名、女性8名、平均年齢34歳)と健康な男女20名を対象とし、味覚・嗅覚障害と関連のある脳領域の体積の評価(頭部MRI)、血中エンドカンナビノイドレベルの測定、血液検査(嗅覚障害と関連のあるデータの評価:ビタミンB12、亜鉛、鉄、フェリチン、甲状腺刺激ホルモン、チロキシン)が実施されました。

また、対象者にアンケートを実施し、味覚・嗅覚障害の程度を数値化。その数値と上記のデータとの相関関係について分析が行われました。

その結果、新型コロナウイルス感染により味覚・嗅覚障害が認められた人は健康な人と比べ、左嗅内野の体積が大きく、エンドカンナビノイドレベルが高くなっていたことが明らかに。また、左右の嗅内野の体積とエンドカンナビノイドレベルとの間には負の相関関係があることが示されました(エンドカンナビノイドレベルが高いほど、体積が小さくなる)。

他にも味覚・嗅覚障害のある人では右角回の体積が小さく、味覚障害のスコアと左右脳梁の前帯状皮質の体積との間に正の相関関係、左前帯状皮質膝下部の体積とフェリチンレベルとの間に正の相関関係が認められました。

エンドカンナビノイドレベルの変化が味覚・嗅覚障害の原因に関与しているのか、それとも神経のダメージを緩和するための救済としてエンドカンナビノイドレベルが変化しているのか、まだ詳細は分かりません。また、上記で示された脳領域の体積の変化が味覚・嗅覚障害の原因であると結論づけるには、まだまだ研究が必要です。

いずれにせよ、新型コロナウイルス感染後の味覚・嗅覚障害にエンドカンナビノイドシステムが関わっている可能性を示した研究はこれが初めてであり、今後の研究報告にも期待が寄せられるでしょう。

なお今年5月には、新型コロナウイルス感染によりCB1受容体CB2受容体の発現量が増加していたことがイランの研究者らにより報告されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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