2022年5月7日、新型コロナウイルスの感染によりカンナビノイド受容体の発現量が増加していたことが、イランの研究者らにより報告されました。
新型コロナウイルスは現在も猛威を奮っているウイルス感染症ですが、糖尿病などの基礎疾患を有する人では感染が重症化しやすいと言われています。
大麻は主にカンナビノイド受容体(CB1受容体・CB2受容体)を始めとしたエンドカンナビノイドシステムに作用することで医療効果をもたらすことで知られており、これには免疫や代謝を調節する作用も含まれています。
今回の研究は、新型コロナウイルスの感染とカンナビノイド受容体との関係を調べること、さらにその中でも糖尿病を持つ人と持たない人で差があるのかを調べることを目的としました。そのため、研究対象者は以下の8グループでそれぞれ選抜されました。
・糖尿病のある新型コロナウイルス感染者(軽度、中等度、重度の3グループ)
・糖尿病のない新型コロナウイルス感染者(軽度、中等度、重度の3グループ)
・糖尿病のある新型コロナウイルス非感染者
・糖尿病のない新型コロナウイルス非感染者
各グループで10名ずつ、合計80名が研究に参加しました。血液検査を実施し、血球からカンナビノイド受容体の遺伝子を抽出することで、カンナビノイド受容体の発現量が調べられました。さらにそれらのデータを統計的に分析することで、それぞれのグループにおけるカンナビノイド受容体の発現量の有意差が評価されました。なお、新型コロナウイルス感染者のカンナビノイド受容体の発現量を調べた研究は、これが初めてとなります。
その結果、新型コロナウイルス感染者は非感染者と比べ、カンナビノイド受容体(CB1受容体・CB2受容体)の発現量が増加していることが明らかとなりました。主にこの差は、重度および中等度の感染者と非感染者との間で認められました。つまり、新型コロナウイルス感染の重症度が高いほど、カンナビノイド受容体の発現量が増加していたということになります。
新型コロナウイルスに感染したグループ内では、糖尿病のある人とない人との間で、カンナビノイド受容体の発現量に顕著な差は認められませんでした。ですが糖尿病のある新型コロナウイルス感染者(重度)と糖尿病のない新型コロナウイルス感染者(中等度)、糖尿病のある新型コロナウイルス感染者(中等度)と糖尿病のない新型コロナウイルス感染者(中等度)といった一部のグループ間で、CB2受容体の発現量に統計的に有意な差が認められました。
この結果を受け研究者らは、新型コロナウイルスの病原性にエンドカンナビノイドシステムが関与している可能性があると結論づけ、新型コロナウイルス治療におけるカンナビノイドの有効性を研究していくべきだと述べています。
2021年9月に同国において公開された論文では、新型コロナウイルス感染者200名を調べた結果、CB2受容体の遺伝子の変異が新型コロナウイルス感染の重症化を招きやすいことが示されています。