ユタ州の州都ソルトレイクシティにある、ユタ大学(University of Utah)。ユタ大学は1850年に創立された全米でも歴史ある大学であり、現在は最先端の研究を行う総合大学となっています。
そんなユタ大学に医療用大麻の研究センターを開設するとした法案「House Bill 230(HB230)」が州議会で可決。3月15日に州知事がその法案に署名したことが明らかとなりました。
ユタ州は2018年に医療用大麻を合法化。HB230の立案者であるジェニファー・デイリー・プロボスト(Jennifer Dailey-Provost)議員は、大麻による臨床試験が著しく制限された中、州内の医療従事者や患者に対し有意義な研究や科学的根拠に基づく情報をほとんど提供できていないと言います。
また、彼女は「ユタ州は研究を行っているわけではなく、世の中に出回っているものを読んでいるに過ぎません」「大麻を薬として推奨できる医療従事者(特に医師、ナースプラクティショナー、フィジシャン・アシスタント)から聞こえてくるのは、包括的なヘルスケアプランの一部として、自信を持って大麻を薦められるほどの情報がないように感じるという声です」と述べました。
このような状況の中で2022年、医療用大麻が非合法な州にあるケンタッキー大学(University of Kentucky)で医療用大麻の研究センターが開設されたことを受け、彼女は今回の立法に至りました。
研究センター開設の主な目的は、ユタ州が州内、米国内、そして世界各地で行われている様々な研究を監視する拠点になることとしています。
さらに彼女は、国立衛生研究所(NIH)が承認する研究目的の医療用大麻の栽培地をユタ州にも作りたいと考えており、「農業の盛んなユタ州は、国立衛生研究所で行われる研究のニーズを満たす拠点となる可能性を有しています」と語っています。なお、NIHから承認を受けた栽培地は全米で6ヶ所しかありません。
研究センターの詳細についてはまだ決定していませんが、保健省からは65万ドル(約8,600万円)の資金が提供されることになっています。
ユタ大学の研究統括責任者であるレイチェル・ヘス(Rachel Hess)教授は「もちろん、1年で全てを達成できませんが、議会は長期的にコミットしてくれています」と述べ、段階的に計画を進めていくと説明。州内の大学や他の研究者の参加も可能であることから、まずは州内でコミュニティを構築することが重要であるとしています。
ヘス教授はこの機会に非常に興奮していると述べ、「私たちは、ユタ州がこの分野で多くのことをリードできると感じていますし、このようなものを作るという先見性を本当に誇りに思います」と述べました。
ユタ州の2022年の医療用大麻の売上は、前年と比べ59%増加。医療用大麻が適応された病状として最も多かったのは慢性疼痛で、次いでPTSD。なお、嗜好用大麻は現在も違法となっています。
なお、米国では今年2月、世界最高峰の大学の1つであるイェール大学が大麻を研究するための研究センターを開設することを発表しています。
The Daily Utah Chronicle「A Center for Medical Cannabis Research is in the Works at the U」https://dailyutahchronicle.com/2023/03/26/center-for-medical-cannabis-research/
High Times Magazine「Center for Medical Cannabis Research To Open at University of Utah」https://hightimes.com/news/center-for-medical-cannabis-research-to-open-at-university-of-utah/
MJBizDaily「Utah medical marijuana sales up nearly 60% to $118.7 million in 2022」https://mjbizdaily.com/utah-medical-marijuana-sales-up-nearly-60-percent-in-2022/