難治性PTSD患者、医療用大麻使用により主症状や睡眠の改善を報告

難治性PTSD患者、医療用大麻使用により主症状や睡眠の改善を報告

- イスラエルの後ろ向き研究

1月19日、標準治療で寛解が認められなかった慢性PTSD患者が、医療用大麻使用により主症状や睡眠の改善を認めていたことが、学術誌Frontiers in Psychiatryにて報告されました

研究の舞台は、1990年代より医療用大麻が合法となっているイスラエル。PTSDが医療用大麻の適応疾患となったのは2013年からになります。

保健省のガイドラインによると、①発症して3年以上、②中等度以上のPTSD、③SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)やSNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)など2種類以上の薬剤による治療歴や、2種類以上の精神療法による治療歴がある、④精神病や物質使用障害の既往歴がない人において、医療用大麻の使用が許可されます。

研究の対象となったのは、2015〜2018年の間、イスラエル最大の医療サービス機関Clalit Health Servicesが運営するBrull Community Mental Health Centerに受診していた難治性PTSD患者14名(男性12名、平均年齢49.5歳)。

これらの患者は戦争関連でPTSDを発症しており、罹患歴は平均して27.6年間。ほとんどがうつ病(71%)や睡眠障害(86%)を併発しており、全員が医療用大麻の適応基準を満たしていました。

医療センターでは治療効果を評価するため、6ヶ月ごとに質問表によるフォローアップを実施。質問表には、睡眠の質を評価するピッツバーグ睡眠質問表(PSQI)と、PTSDの重症度を評価する外傷後ストレス診断尺度(PDS)が用いられていました。これらのスケールは数値が高いほど、障害の程度が高いことを意味します。

PDSは再体験(トラウマを受けた時と同様の感情が沸き起こる)、回避・麻痺(トラウマを連想させるものやその場所を避けたり、感情が麻痺した状態)、過覚醒(イライラしやすかったり、刺激に敏感になる、慢性的にストレス反応が起きている状態)など、症状別に重症度を評価することが可能となっています。

今回の研究では、医療用大麻の使用前後でこれらのスコアを比較することで、PTSDに対する有効性の検証が行われました。

患者は医療用大麻による治療を開始後、平均して1.1年間のフォローアップを受けていました。大麻の使用量は全員20g/月以下でしたが、最小使用量は特定できず、また摂取方法や種類、カンナビノイドテルペンの比率などは特に決められていませんでした。

医療用大麻の治療により、PSQIにおいて睡眠の総スコア(14.6→10.1)、睡眠時間(4.3時間→5.2時間)、睡眠の質(3.0→1.0)が有意に改善。一方で、30分以内の入眠困難は統計的にわずかな改善に留まりました(3.0→1.5)。

PSDでは、80%近くの患者がPTSD症状の改善を報告し、65%以上の患者において20%以上の症状軽減が認められていました。具体的に再体験(9.1→7.1)、回避・麻痺(10.6→8.0)、過覚醒(10.7→7.6)の項目で有意な改善が認められていましたが、大麻由来医薬品「ナビロン」で改善が報告されている悪夢においては、改善が認められませんでした(2.0→2.0)。

全ての患者は寝る前にしか大麻を使用しておらず(大麻の誤用や乱用は認められず)、また副作用やその兆候を報告した人もいませんでした。

研究者らは「我々の知る限り、本研究は、戦争関連によって発症した難治性の慢性PTSD患者において、医療用大麻の長期使用の有効性を検証した初めての研究である。我々の行った研究は、医療用大麻による治療がPTSD症状を軽減させることを示した既存の文献と一致している」「今回の結果は、患者が医療用大麻による治療を受けるかどうかを選択するプロセスにおいて、重要な意味を持つ」と述べています。

ただし、この研究は、治療効果を比べるための対照群がなく、参加者が少ないなどの限界があることから、今後より大規模な治験が望まれます。

PTSD患者のうち約3分の1は、標準治療により寛解が認められていないと言います。これらの患者は今も、標準治療に替わる、あるいはそれを補う治療方法を探し求めています。

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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