2022年4月15日、嗜好用大麻が合法な州において、メディケイド加入者の処方薬が減少していたことを報告した論文が、アメリカの研究者らにより公開されました。
※メディケイドとは
アメリカの低所得者に対する医療費助成制度。全年齢を対象としており、子供や妊婦も加入できる。2021年11月時点で、約8600万人が加入している。
この研究では、2011〜2019年におけるメディケイド加入者の全ての処方箋データをもとに、嗜好用大麻の合法化が処方薬の使用率に与える影響について分析しています。
その結果、嗜好用大麻を合法化した州において、痛み、うつ病、不安症、睡眠障害、精神病、てんかんに対する治療薬の処方量が有意に減少していたことを報告しています。
大麻は慢性疼痛や精神症状に対し使用されることが多く、先月公開されたオクラホマ州の調査でも、多くの人に症状の改善が認められています。
大麻により処方薬が減少したという事実は、オピオイドやベンゾジアゼピン系の薬において、よく報告されています。
2021年、カナダで医療用大麻を使用している高齢者9766名における調査では、大麻の使用により主に痛み(64.5%)、睡眠(64.5%)、気分(52.8%)が改善し、オピオイド使用者の35.6%、ベンゾジアゼピン系薬使用者の19.9%において、処方薬の減量が報告されています。
2021年デンマークの研究においても、処方薬のかわりに大麻を使用していると回答した1546名のうち、38.1%が処方薬を中止し、45.9%が使用量の大幅な減少を報告しています。中止・減薬した処方薬として多かったのは、鎮痛剤(67.2%)、抗うつ薬(24.7%)、関節炎治療薬(20.7%)でした。
タイにおいて、医療用大麻により8割の人が症状の改善を実感したという記事でも示したように、医療用大麻が合法でも、アクセスやコスト面の悪さなどの理由により、結局は非合法なルートで大麻を使用しているケースが多くみられます。
今回の研究結果は、嗜好用大麻の合法化が医療目的での大麻の使用を容易にすることを意味しているのかもしれません。
一方、この前日に公開された論文では、また異なった結果を報告しています。
この研究では、2018年と2019年のカナダとアメリカにおける鎮痛目的での大麻の使用状況と、嗜好用大麻の合法化との関連性について調査しています。
カナダは2018年に嗜好用大麻を合法化し、アメリカにおいても2018年にバーモンド州、ミシガン州が、2019年にグアムが嗜好用大麻を合法化しています。
この研究において、鎮痛剤の代わりに大麻を使用していた人は15092名でした。このうち、カナダでは2018年に79%、2019年に78%が大麻の使用を報告しています。アメリカにおいては、嗜好用大麻が違法な州では2018年に80%、2019年に83%が、嗜好用大麻が合法な州では2018年に83%、2019年に84%が大麻の使用を報告しています。
これらの結果は、嗜好用大麻の合法化が、鎮痛目的で大麻を使用している人の割合に影響を与えていないことを示しています。
ただしこの研究は1年の間でしか比較されていないため、もしかしたら数年後には違う結果になるかもしれません。