米運送業、大麻陽性反応者多数にて人手不足深刻 議会に対応求める

米運送業、大麻陽性反応者多数で人手不足深刻 議会に対応求める

/

アメリカでは、大麻を合法化した州が着実に増えていますが、連邦法では未だ違法のまま。このようなミスマッチが、ある業界に影響を及ぼしています。

連邦自動車運輸安全局(FMCSA)のDrug & Alcohol Clearinghouseのデータによれば、2022年、薬物検査により約4万1,000名のトラック運転手から大麻の陽性反応が認められ、前年と比べ32%増加していたとのこと。

アメリカでは、トラック運転手に対し薬物検査が義務付けられています。大麻の陽性反応が認められた場合、トラック運転手は運転を禁じられ、復職するためのプロセスを経て、再度薬物検査を受ける必要があります。

Drug & Alcohol Clearinghouseが2020年に設立されて以来、トラック運転手の薬物陽性反応は16万6,000名以上(大麻では10万名以上)に認められていますが、約9万1,000名が未だ復職プロセスに参加しておらず、復職を果たしたのはおよそ4分の1程度(約46,000名)となっています。

このような状況もあり、現在アメリカの運送業界では、およそ78,000名分の労働力が不足しており、深刻な状況となっているようです。

2月1日、下院の公聴会に呼ばれた米国トラック協会(ATA)会長クリス・スピア氏は、州レベルの大麻合法化が運送業界に与えている影響について尋ねられ、大麻使用後の運転やそれに伴う事故が生じた場合の法的責任について懸念を示し、「夜も眠れない問題である」と返答。

続けてスピア氏は「連邦政府と州の規則との間に矛盾があり、この曖昧さが訴訟となり得る環境を生み出し、私たちは板挟みの状態となっている」「合法なら、家で大麻を吸っても構わない。けど、8万ポンド(約3.5トン)の乗り物は運転しないでもらいたい。私たちは確固たる規則のもとで、それを遵守する必要がある」と述べました。

一般的にアメリカでは、大麻使用のスクリーニングは尿検査にて行われ、尿中のTHC代謝産物(THC_COOH)の有無により陽性かどうかを判断していますが、この不活性の代謝産物は数週間から数ヶ月は検出されます。

そのため、最近大麻を使用していなかったとしても、尿から陽性反応が検出されたがために雇用を拒否されたり、定期的に薬物検査が行われるような運送業などの職場であれば、休日であっても大麻を使用できない状況となっています。

上記のような状況に対し、NORMLの副長ポール・アルメンターノ氏は「運輸省が頼っているこの時代遅れの技術と差別的な政策は、今の現実とマッチしておらず、運送業者における人手不足の危機を助長している」とコメント。

さらに「職場における大麻検査は、今も昔も、エビデンスに基づいた政策ではない。この差別的なやり方は、1980年代の麻薬戦争時代の名残に過ぎない。今や時代は変わっている」「職場規則はこの新しい時代に適合し、職場を脅かすことのない勤務時間外の活動に対し罰則を与えるのをやめるべきである」と述べました。

昨年、米運輸省は、運送業者に対し実施する薬物スクリーニングとして、尿検査だけでなく、唾液による検査を代替オプションとして追加することを推奨。

大麻の使用頻度にもよりますが、唾液からTHCが検出されるのは大麻使用1時間後〜24時間程度とされています。これが定着すれば、トラック運転手は少なくとも休日に大麻を使用することが可能となるでしょう。

一般的に大麻の使用は運動機能や認知機能に影響を及ぼし、特にこれはTHC濃度が高いほど、また大麻の使用経験が少ない人ほど大きいと言われています。そのため、大麻使用直後の運転は避けるべきと言えます。

こうなると、重要となってくるのは「翌日までその影響が残っているかどうか」ということになるでしょう。

最近シドニー大学の研究者らによって公開されたシステマティックレビューでは、大麻使用が翌日のパフォーマンスに悪影響を与えるとするエビデンスは非常に限られており、アルコールと比べてもその可能性は低いことが報告されています。

乏しいエビデンスに基づいた就労規則により、人手不足が顕著となっているアメリカの運送業界。このような新たなエビデンスが示される中で、今後どのような対応がとられるのか、注目が集まります。

Marijuana Moment「Lawmakers Must ‘Step Up’ And Address Federal-State Marijuana Conflict, Trucking Executive Tells Congress Amid Labor Shortage」
https://www.marijuanamoment.net/lawmakers-must-step-up-and-address-federal-state-marijuana-conflict-trucking-executive-tells-congress-amid-labor-shortage/

Marijuana Moment「Tens Of Thousands Of Truckers Are Testing Positive For Marijuana And Leaving The Industry Amid Labor Shortage, Federal Data Shows」https://www.marijuanamoment.net/tens-of-thousands-of-truckers-are-testing-positive-for-marijuana-and-leaving-the-industry-amid-labor-shortage-federal-data-shows/

Transport Topics「Positive Marijuana Tests Among Drivers Grow at Alarming Rate」https://www.ttnews.com/articles/positive-marijuana-tests-among-drivers-grow-alarming-rate

NORML「Tens of Thousands of Commercial Truckers Leaving the Workforce Over Outdated Marijuana Testing Requirements」https://norml.org/blog/2023/01/27/tens-of-thousands-of-commercial-truckers-leaving-the-workforce-over-outdated-marijuana-testing-requirements/

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

Recent Articles

イギリス、ヘンプの栽培規制を緩和

4月9日、イギリス政府は経済的・環境的可能性を最大限に引き出すため、ヘンプの栽培規制を緩和することを発表。この新たな規制は2025年の栽培シーズンより施行されます。 イギリスにおいてヘン...

マラウイが高THC大麻の栽培を承認

マラウイ共和国の議会は、認可された栽培業者が輸出を目的とし、THC濃度の高い国産大麻を栽培することを承認しました。 アフリカの南東部に位置するマラウイはタバコの主要な生産国であり、国...