光線力学的療法(PDT)とCBD

光線力学的療法(PDT)とCBD

-がん治療の新たな可能性-

日本人の死因の第一位となっている、がん。

がんの主な治療は手術、化学療法、放射線療法ですが、これらの標準治療には侵襲や副作用がついて回り、高齢者では治療を受けるのが難しい場合があります。

近年、低侵襲であり、問題となる副作用がほとんどない光線力学的療法(PDT)というがん治療が注目を浴びています。さらにこの治療にCBD(カンナビジオール)を組み合わせることで、より高い治療効果をもたらす可能性が示されています。

PDTとCBDの組み合わせ。がん治療の新たな可能性についてお話します。

光線力学的療法(PDT)とは?

光線力学的療法(PDT)とは、レーザーを照射することにより、がんを変性・壊死させる治療法です。がんに親和性のある光感受性物質を静脈から投与し、その後、内視鏡下で低出力のレーザーをがんに照射することで活性酵素を発生させ、がん細胞・血管を壊死させます。

治療成績は良好で、例えば2019年の研究では、子宮頸がん患者56名に対しPDTを行った結果、患者の75%で治療が奏功し、90%で2年以内に再発が見られなかったと報告されています。

化学療法や放射線療法はがん細胞だけでなく正常な細胞も攻撃してしまいますが、PDTはがん細胞に的を絞って攻撃することができます。なのでPDTは侵襲が少ないだけでなく、問題となるような副作用も少ないです。

PDTを受けた2013名の記録を分析した研究では、PDTにより認められた副作用は痛み(92%)、紅斑・浮腫(89%)、かゆみ(92%)であったと報告しています。ただしこれらは適切な処置を行えば大きな問題とはならず、治療結果を損なうことはなかったようです。

PDTは原発性のがんや早期がんに有効とされています。日本では早期の肺がん、表在型の食道がんや早期胃がん、初期の子宮頸がん、進行がんによる気道狭窄、原発性脳腫瘍などでPDTが保険適応となっています。

またPDTは、手術、放射線療法、化学療法、免疫療法といった標準治療と併用されることにより、より高い治療効果をもたらしたことも報告されています。

PDTは内視鏡の届く範囲でしか実施できず、肝臓や腎臓といった身体の深部にある臓器に対しては適応されません(脳腫瘍におけるPDTは例外で、手術と併用し実施されます)。あるいは胃や食道などにおいても、腫瘍が深部に浸潤している場合は不適応となります。

CBD(カンナビジオール)とがん治療

CBD(カンナビジオール)は大麻草に含まれる主なカンナビノイドで、研究により様々な疾患や症状に対し、有効性が示されています。有名なのは抗てんかん作用で、日本でも高濃度CBD製剤エピディオレックスによる治験が、今後難治性てんかん患者に対して行われる予定となっています。

CBDはがん治療においても注目を浴びています。数々の基礎研究において、CBDはがん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導し、転移・湿潤・血管新生を抑制し、さらには抗がん剤の作用を高める可能性も示されています。

高齢のため化学療法・放射線療法による治療を拒否した81歳の肺腺がんの男性が、CBDオイルを摂取したことで腫瘍の縮小が認められたという症例報告も存在します。

光線力学的療法(PDT)とCBD

CBDにおいてはまだ可能性とまでしか言えませんが、PDTとCBDに共通するのは、単独で抗がん作用があり、標準治療と併用することで治療効果を高めることができ、副作用が少ないということです。

では、PDTとCBDを併用するとどうなるのでしょうか。

PDTとCBDの併用に関する論文は、筆者の知る限り、現時点で4件です。大腸がん乳がん、そして新たに2022年4月28日には子宮頸がんにおいて、その有望性が論じられています。

2022年1月の研究では、大腸がん細胞株をPDTとCBDで処理ところ、PDTもCBDも単独で強力な抗がん作用を示しましたが、PDTとCBDの併用において最も高い抗がん作用が示されました。この結果から研究者らは、PDTとCBDを併用することで、原発性のがん及びがんの転移を根絶できるかもしれないと述べています。

低侵襲で副作用の少ないPDTを、CBDがサポートする。PDTとCBDの併用が、がん治療の新たな可能性を切り開くことに、期待が高まります。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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