フィリピン、大麻の非犯罪化について国会で議論

フィリピン、大麻の非犯罪化について国会で議論

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現在、フィリピンにおいて大麻は「危険ドラッグ(物質)」に分類されており違法です。大麻の栽培、10g以上の大麻樹脂・大麻樹脂抽出物及び500g以上の乾燥大麻の所持では、最高で1,000万ペソ(約2,450万円)の罰金と終身刑が科されるほどの重罪となっています。

2月21日、フィリピンの代議院(下院)において、ロバート・エース・バーバーズ氏が議長を務める危険ドラッグ委員会が開催。第19回議会におけるこの日の委員会では、2022年6月にマルコス大統領が就任して以来初めて、大麻の生産・販売・使用を非犯罪化する法案についての議題が取り上げられました。

前代議院議長であり、北ダバオ州第1区の現代議員であるパンタレオン・アルバレス氏は今年1月、大麻、大麻樹脂、これらの抽出物やチンキ剤を危険ドラッグリストから外すとした法案「第6783号」を提出。アルバレス氏はこの法案の具体化に向け、保健委員会とともに技術作業部会を設置することを委員会で求めました。

アルバレス氏は「大麻とその派生物を危険ドラッグに分類するのはデタラメである。全く道理にかなっていない。私たちはこの不条理を正さなければならない」「もし政府がアルコール飲料や発がん性のあるタバコ、糖尿病をもたらす砂糖入り飲料などのような有害な製品を認めるのであれば、どうしてこれらの物質より有害性が低く、多くの利点があり、政府の収入となり得る物質の生産や販売を非犯罪化することができないのか?」と発言。

続けて「大麻とその派生物を非犯罪化(合法化)することで、その生産と販売から何十億もの税金が得られる。この税収は道路や橋の建設、学校や病院の増設、公益のための公的サービスの向上に活用することができる。(新型コロナウイルスの)パンデミック時に生じた経済危機による深刻な負債の返済に充てることだって可能である」と述べました。

フィリピンの大麻政策においてこのような提案はまだ初期段階にあり、マルコス政権における優先法案にも入っていません。

しかし、代議院議長を務めるバーバーズ氏はこの法案に対し前向きな姿勢をみせており、フィリピンのニュースメディア「Rappler」の取材に対し「まずは全議員と専門家の意見を聞きたい」「法案の提案者が(大麻を)危険ドラッグから除外することを求めるのであれば、なぜそれを望むのか根拠がなければならないため、多くの議論が必要になるだろう」「販売を可能にすることについて議論する前に、まずはリストから除外しなければならない」とコメント。

フィリピンではこの法案以外にも、医療用大麻の合法化を求める複数の法案が保健委員会に提出されているとのこと。代議院保健委員長のシリアコ・ガトー氏はRapplerの取材に対し、規制された医療用大麻については賛成であると語っています。

これまでフィリピンでは第17回議会において、医療用大麻の合法化法案が代議院で承認されましたが、元老院(上院)にて失速しています。

Rappler「House revives talks to decriminalize marijuana use in the Philippines」https://www.rappler.com/nation/house-panel-bill-revives-talks-decriminalize-marijuana-use-philippines/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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