「大麻を使用するとなぜハイになるのか?」
そのような疑問からCB1受容体、次いでCB2受容体が発見され、これらの受容体に作用する成分「エンドカンナビノイド」が私たちの身体の中で作られていることが明らかとなりました。
エンドカンナビノイドのうち、主要なものとして知られているのはアナンダミド、2-AG(2-アラキドノイルグリセロール)です。アナンダミドはカンナビノイド受容体を部分的に活性化し(パーシャルアゴニスト)、2-AGは完全に活性化する働きを持つとされています(フルアゴニスト)。
これまでにエンドカンナビノイドの中でカンナビノイド受容体のフルアゴニストとして同定されていたのは、唯一「2-AG」だけでした。ですが、それはもう過去の話となりそうです。
今月23日、カンナビノイド受容体に対する2つ目のフルアゴニストであるエンドカンナビノイド「ペンタデカノイルカルニチン(PDC)」が発見されたことがアメリカの研究者らにより報告されました。
ペンタデカノイルカルニチンは脂肪酸の1つである「ペンタデカン酸(C15:0)」の代謝産物です。ペンタデカン酸は主に牛乳などの乳製品に多く含まれており、新たな必須脂肪酸とも言われています。
ペンタデカン酸は健康面で期待されており、実際に様々な疾患と関連している可能性が指摘されています。
例えば、ペンタデカン酸の血中濃度が高いほど心血管疾患の発症率が低下していたこと、逆に血中濃度が低いほど死亡率が上昇していたこと、さらにはがんにも有効である可能性などがこれまでに報告されています。
今回「ペンタデカノイルカルニチン」を発見した研究者らは、以前にイルカに対し様々な脂肪酸を含んだ食事を提供した結果、ペンタデカン酸の摂取量増加が貧血の改善と有意に関連したことを報告していました。
今回の研究では、ペンタデカン酸を豊富に含んだ食事をイルカに6ヶ月間提供した結果、ペンタデカン酸の代謝産物の中で、ペンタデカノイルカルニチンが最も重要な物質であることが同定されました。
続いてペンタデカノイルカルニチンの生理活性を様々な細胞株を用いて検証した結果、用量依存的に抗炎症作用が認められました。
そして、ペンタデカノイルカルニチンがCB1およびCB2受容体に対しフルアゴニストとして作用することを発見。他にもセロトニン(5HT1A、5HT1B)受容体を活性化し、一方でヒスタミン(H1、H2)受容体に対し拮抗作用することも報告されました。つまり、これらはうつ病や不安障害などの精神疾患や、喘息やアトピーなどのアレルギー性疾患と関連する可能性を示しています。
研究者らは「ペンタデカノイルカルニチンは炎症、痛み、気分、睡眠、ストレスなど、心身の健康増進と関連している可能性がある。世界的に増加しているアレルギーや精神疾患・睡眠障害と、ペンタデカン酸の摂取不足との関連について、今後研究を進めていく必要があるだろう」と述べています。