CBD主体の舌下スプレー、糖尿病患者の血糖・脂質コントロールに有効性を示す

CBD:THC=10:1の舌下スプレー、糖尿病患者の血糖・脂質コントロールに有効性示す

- イランの臨床試験

2月25日、CBDTHCを10:1の割合で配合した舌下スプレー「CBDEX1」が、糖尿病患者の血糖や脂質コントロールに有効性を示したことがイランの研究者らにより報告されました。この論文は「Innovative Journal of Pharmaceutical Research」に掲載されています

私たちの血糖値は、ホルモンや神経系の働きにより、常に一定の濃度で保たれています。食事により血糖値が上昇すると、膵臓すいぞうからインスリンが分泌。血中の糖分(グルコース)が筋肉、肝臓、脂肪組織へと取り込まれ、グリコーゲンとして貯蔵されることで、血糖値が低下します。

一方、空腹で血糖値が低下した場合は、貯蔵されたグリコーゲンからグルコースが作られることで、血糖値を上昇させています。なお、血糖値を上昇させるホルモンはいくつかありますが、血糖値を下げるホルモンはインスリンしか存在しません。

糖尿病とは、膵臓からインスリンが分泌されなかったり、インスリンが分泌されても効きが悪くなったりすることで、慢性的に血糖値が上昇した状態になる病気のこと。この状態を放置すると、網膜症、腎症、神経障害といった三大合併症に加え、脳及び心血管系疾患のリスクが上昇したり、足の怪我が治らず壊死するなど、重篤な合併症が出現します。

糖尿病は、免疫異常により膵臓の細胞が破壊され、インスリンの分泌が障害される「1型糖尿病」と、主に生活習慣が原因となり、インスリンの分泌低下やインスリン抵抗性(インスリンの効きが悪くなること)が認められる「2型糖尿病」に分類されます。

大麻を使用すると「マンチー」と呼ばれる食欲増進作用が認められることから、いかにも肥満や糖尿病患者が多くなりそうなイメージがあるかもしれません。しかし、実際は、大麻使用者は肥満度が低く糖尿病の有病率が低いといったデータが存在します。

2013年の研究では、疾病予防対策センター(CDC)による米国全国国民健康・栄養調査(NHANES)のデータを分析した結果、大麻使用者は非使用者と比べ、インスリン抵抗性やウエスト周囲径が有意に低かったことが報告されています。

インスリンは膵臓のランゲルハンス島から分泌されますが、そこでは、CB1受容体CB2受容体の存在が確認されています。かつては、CB1受容体の逆作動薬であるリモナバントが、肥満や糖尿病の治療薬として期待されたことがありました(リモナバントは精神面での副作用が重篤であったことから、現在は市場から撤退)。

大麻に含まれる成分CBDは、CB1受容体の働きを弱めつつも、アナンダミドなどのエンドカンナビノイド量を増やす働きを有していると考えられています。そんなCBDは、1型糖尿病モデルマウスにおいて膵臓の炎症を抑え、また、糖尿病による合併症に対し保護的に作用することが示されています。

CB1受容体とCB2受容体に部分的に作用するTHCは、糖尿病に対しては相反する結果が報告されていますが、2022年10月に公開された研究では、THCは高インスリン血症マウスにおける膵臓の炎症を抑え、インスリンの分泌を低下させたことが報告されています。

今回の研究では、そんなCBDとTHCを10:1の割合で配合した舌下スプレー「CBDEX1」(1噴霧につきCBD100μg、THC10μgを含有)が、糖尿病患者の血糖や脂質コントロールに有効なのかが調べられました。研究を行ったのは、国内外で多くの名誉を誇るイランの国立大学「シャヒード・ベヘシュティ大学(Shahid Beheshti University)」の研究チーム。

研究の対象となったのは、HbA1C9%以下、善玉コレステロールが男性で46.5mg/dl以下・女性で50mg/dl以下、中性脂肪800mg/dl以下という基準を満たした、2型糖尿病患者50名。

また、これらの患者はインスリンを使用しておらず、フィブラート、オメガ3脂肪酸エチル(脂質異常症治療薬)や、チアゾリジン、α-グルコシダーゼ阻害薬(糖尿病治療薬)を服用していないことも条件とされています。それ以外の血糖降下薬に関しては、全員投与量が一定となるよう予め調節されました。

参加者はCBDEX1群(25名)とプラセボ群(25名)にランダムに振り分けられ、それぞれ8週間に渡り治療を実施。CBDEX1及びプラセボは、1日に2回(朝食と夕食の30分前)、1回につき2噴霧ずつ舌下に噴霧されました(舌下投与は経口投与と比べ、吸収率が高く効果発現が早いことで知られている)。

できるだけ正しい評価を行うため、治療者と患者はどちらの薬剤を使用しているのか把握できないよう盲検化されました。

有効性の評価は、治療前後における血液データの比較により実施。血糖値に関する評価には空腹時血糖、75gOGTT、HbA1Cが、インスリンに関する評価には血中インスリン、HOMA-IR、HOMA-βが、脂質に関する評価には総コレステロール、LDL-C(悪玉コレステロール)、HDL-C(善玉コレステロール)、中性脂肪といった指標が用いられました。

※評価指標について

・空腹時血糖
基準値=70〜110mg/dl

・75gOGTT(食後2時間後血糖)
基準値=140mg/dl未満

・HbA1C(約2ヶ月間の血糖コントロールの指標)
基準値=4.6〜6.2%(高いほど血糖コントロール不良)

・血中インスリン
基準値:2〜10μU/ml(15以上でインスリン抵抗性ありと判断)

・HOMA-IR(インスリン抵抗性の指標)
基準値=1.6以下(2.5以上で抵抗性ありと判断)

・HOMA-β(インスリン分泌能の指標)
基準値=40〜60%程度(40%未満で分泌能低下と判断)

・総コレステロール値(T-cho)
基準値=120〜220mg/dl

・LDL-C(悪玉コレステロール)
基準値=70〜140mg/dl

・HDL-C(善玉コレステロール)
基準値:40〜70mg/dl

・中性脂肪
基準値=30〜149mg/dl

8週間治療を受けフォローアップまで完了したのは、CBDEX1群で24名、プラセボ群で22名。CBDEX1群では、1名がめまいと立ちくらみにより治療を中断。プラセボ群では1名が舌下の口内炎により離脱し、2名がフォローアップを完了しませんでした。

CBDEX1群で報告された副作用は頭痛(1名)、食欲低下(1名)、その他(2名)のみで、良好な忍容性が示されました。

8週間の治療により、CBDEX1群はプラセボ群と比較して、空腹時血糖、75gOGTT、HbA1Cが有意に低下。治療前後における比較でも、プラセボ群では空腹時血糖、75gOGTT、HbA1Cが有意に増加(悪化)していたのに対し、CBDEX1群ではこれらが有意に低下(改善)していたことが明らかとなりました。

インスリンに関しては、プラセボ群と比べ、CBDEX1群において血中インスリン量とHOMA-IRが有意に低下(改善)していましたが、HOMA-βでは両群で有意差が認められませんでした。

脂質パラメーターもCBDEX1群はプラセボ群と比較し、総コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪が有意に低下。治療前後における比較でも、プラセボ群では総コレステロールが有意に上昇(悪化)したのに対し、CBDEX1群では総コレステロール、悪玉コレステロール、中性脂肪が有意に低下していました。

CBDEX1群の治療前後における血液パラメータの具体的数値は、以下の通り。

研究者らは、CBD:THC=10:1の舌下スプレーの使用により、耐糖能(血糖値を下げる能力)、インスリン抵抗性、脂質パラメータが改善されることが実証されたとし、糖尿病患者の血糖や脂質コントロールに対し、CBDEX1が新たな治療の1つとなる可能性があると述べています。

今回の研究では、カンナビノイドがインスリン抵抗性に改善をもたらすことが示されました。2022年7月の基礎研究では、CBDとTHCは糖尿病治療薬であるアカルボースよりも、強力なα-グルコシダーゼ阻害能力を有していたことが報告されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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