セントクリストファー・ネイビス、医療用大麻産業確立に向け本格的始動

セントクリストファー島とネイビス島の2島から成るカリブ海の島国、セントクリストファー・ネイビス連邦。日本ではあまり知られていないであろうこの島国は、国内総人口約5万人に対し、年間約100万人もの海外観光客が訪れるほどの人気を誇っています。また、この島国には他のカリブ海の国々と同様、ラスタファリアンが多く存在しています。

ジャマイカ、アンティグア・バーブーダ、バルバドスといったカリブ海の国々が医療用大麻を解禁している中、ついにセントクリストファー・ネイビスも医療用大麻産業確立に向け本格的に始動することが、大麻愛好家たちの祝日「4月20日」に明かされました。

セントクリストファー・ネイビスでは2019年、大麻の禁止は宗教の自由とプライバシーを侵害するものであるため違憲とした判決を東カリブ海最高裁判所が下し、18歳以上の成人における15gまでの乾燥大麻の所持、5株未満の大麻の栽培を非犯罪化。翌年には所持量がさらに許容され、乾燥大麻56g、大麻樹脂15g以下の所持が非犯罪化されています。

なお、公共の場での大麻の使用は1,000東カリブ・ドル（約5万円）の罰金、または最大50時間の社会奉仕活動に課せられ、これらが不履行の場合には、3日間の禁固刑となる可能性があります。

また、セントクリストファー・ネイビスは2020年に「2020年大麻法（Cannabis Act, 2020）」を成立。この法律は慢性疼痛、多発性硬化症、パーキンソン病などQOLを低下させる慢性疾患・症状などの代替医療として、患者が医療用大麻にアクセスすることを認めたもの。加えて、医療用大麻の栽培、生産、供給、所持、使用などのライセンス管理を行う医療大麻局の設立についても規定されています。

この法律でこれまで有効とされてきたのは、医療用大麻局の予備的事項を定めた第Ⅰ〜Ⅱ部のみでした。しかし、4月20日、ついに政府は第Ⅲ〜Ⅶ部を含む法律全ての発効を正式に承認し、連邦内で責任ある大麻の使用やその派生物の規制体制を明確にする意思を示しました。

これにより、農務大臣のサマル・ダギンズ（Samal Duggins）氏が医療大麻局の責任者となり、各種ライセンスの発行など、医療用大麻の規制政策を実施する権限が与えられることになります。

ダギンズ大臣は「責任ある、専門的で持続可能な医療用大麻産業を発展させるという政府の計画において、これは重要な一歩です」「私たちの目標は、大麻の使用に関する法律を全ての人が理解できるよう明確にし、新たな起業家たちがこの新しい産業で成功できるようにすることです。ラスタファリグループや伝統的な栽培農家を優先して、この急成長する産業を活用するための中小企業の育成を支援するよう努めていきます。今日から、420フレンドリーな社会になるための旅が始まるのです」とコメント。

また、テランス・ドリュー（Terrance Drew）首相は「経済の多様化には、医療用大麻産業のような、国民に持続的な収入をもたらす道を探ることが含まれます。しかし、政府は薬物乱用とそれによる社会への影響にも真剣に取り組んでいます。そのため、国家安全保障省は『国家薬物乱用計画2023-2028（National Substance Abuse Plan 2023-2028）』をまとめています。私たちは責任ある政府であり、常に国民の経済成長と身体的健康の利益を最優先するために行動していきます」と述べました。

なお、先に実施された総選挙において、ドリュー首相や首相が所属する労働党の選挙公約には「大麻産業の確立」が含まれていました。大麻産業確立にあたり、首相は国外の人に産業を支配させることはなく、島民を中心として発展させていく意向を明らかにしています。