スロベニア初　製薬会社にシロシビン研究を許可

4月3日、ヨーロッパを拠点とする製薬会社「MGCファーマシューティカルズ」は、スロベニア保健省からシロシビンの研究許可を得たことを発表しました。ヨーロッパ中南部に位置するスロベニア共和国において、シロシビンの研究が認められた企業は同社が初となります。

シロシビンはマジックマッシュルームに含まれているサイケデリクス（幻覚剤）成分で、うつ病、PTSD、終末期における不安など、精神疾患を中心に有効性が期待されています。

MGCファーマはスロベニア保健省の許可により、分析法の開発、シロシビンの物理化学的特性の研究、投与に適した医薬品形態の開発などを行っていく予定です。

同社は他の製薬会社と協力し、シロシビンの特性を理解するための研究能力を提供することも計画。また、シロシビン由来の新薬の開発や研究を支援することでサイケデリクス産業を製薬会社に近づけるとともに、成長するサイケデリクス産業に対してサービスを提供できるようになるとも述べています。

MGCファーマのCEOであるロビー・ゾマー（Roby Zomer）氏は「スロベニア保健省からシロシビンの薬学研究の許可を得たことにより、当社は試験的な薬学研究の最前線に立つことができ、大変嬉しく思います」「CimetrA®とCannEpil®という当社の中核的な開発パイプラインに注力し続ける一方で、他の製薬パートナーと協力してシロシビンの特性を確立し、衰弱した人々の治療を目的とした医薬品開発のためにシロシビンをどのように活用できるのか立証していくことを楽しみにしています」とコメント。

MGCファーマは植物由来の医薬品の開発・供給をメインとした製薬会社であり、カンナビノイド医薬品を多く取り扱っています。CannEpil®は難治性てんかん患者の治療を目的としたCBDベースの医薬品のこと。CimetrA®はボスウェリアセラータとクルクミンといった天然成分をベースにした抗炎症薬で、新型コロナウイルスによるサイトカインストームを抑制する効果が期待されています。

同社はオーストラリア、イギリス、ブラジル、アイルランドで患者数を伸ばしており、世界的な販売拠点を有しています。

オーストラリアでは2023年7月1日より、難治性のうつ病に対しシロシビン、PTSDに対しMDMAの処方が可能となります。MGCファーマはオーストラリアにも拠点を有していることから、スロベニアでの研究が進めば、オーストラリアでも市場を開拓していく可能性があります。

シロシビンやMDMAなどのサイケデリクスに対する世界の注目はますます高まっています。

今年2月には、同州に拠点を置くフィラメント・ヘルス（Filament Health）社が、世界初となるアヤワスカの錠剤を開発。アヤワスカの幻覚作用はこれまでの研究で、うつ病、自殺企図、不安、トラウマ、悲しみ、依存症などの精神症状や神経変性疾患などに対し有効性が示されています。

今年3月にオランダ政府は、MDMAの特性、社会におけるリスクとメリット、治療の潜在的価値などを評価するための国家委員会を設立したことを発表。

カナダのブリティッシュコロンビア州に本社を置くルーシー・サイエンティフィックディスカバリー（Lucy Scientific Discovery）社は、偏頭痛、群発頭痛、三叉神経痛（顔面痛）、うつ病の治療を目的とし、CBDとシロシビンを独自に配合した医薬品の開発を進めています。

サービスセンターにおけるシロシビンの個人使用を合法化した米オレゴン州は、今年3月、サービスセンターで使用するためのシロシビンの生産ライセンスを全米で初めて付与しています。

3月21日に公開されたアメリカの調査では、米国民の半数以上が、MDMAやシロシビンなどのサイケデリクスによる治療やその非犯罪化を支持していたことが報告されています。