当事者たちが語る、医療用大麻の使用理由・有効性・課題と問題点

当事者たちが語る、医療用大麻の使用理由・有効性・課題と問題点

- アメリカの横断的研究

医療技術や治療薬は日々進歩し、多くの人々に恩恵をもたらしていますが、そのような中でなぜ医療用大麻を使用する人々がいるのでしょうか?そして医療用大麻使用者はどのように効果を感じ、どのような問題点があると感じているのでしょうか。

今月6日、医療用大麻使用者を対象に大麻の有効性や問題点などについてオンライン調査を行った結果がアメリカの研究者らにより報告されました。

医療用大麻使用者の実態調査はこれまでにも行われてきましたが、今回の調査が一味違うのは「選択式」ではなく「自由(記述式)回答」によるもので、なおかつそれなりに規模が大きいという点です。

調査は2016〜2018年に渡って行われ、成人の医療用大麻使用者524名と、子どもなどに医療用大麻を使用している介護者284名の合計808名から回答が得られました。回答者の平均年齢は38歳で、63%が女性。全体として神経疾患(38%)と慢性疼痛(25%)を有している人が多くみられました。

調査内容は「使用中の大麻製品」「使用し始めた理由」「有効性」「課題や問題点」など。それぞれ回答はカテゴリー別に分けられ、分析が行われました。

少し長くなりますが、1つずつ順番にご紹介していきます。

目次

使用中の大麻製品

使用中の大麻製品として最も多かったのはCBD(カンナビジオール)またはCBD優位の製品(45%・361名)で、次いでTHC(テトラヒドロカンナビノール)製品(7%・53名)、大麻の花(4%・32名)でした。

「CBDだけじゃ十分に痛みがとれなかったので、途中からTHCを使用するようになりました」といった回答もみられました。

大麻を使用し始めた理由

医療用大麻の使用開始理由に対する回答は、以下の7つのカテゴリーに分けられました。

①病気や症状をコントロールするため(53%・432名)

②従来の治療が効かない、あるいはその副作用に耐えられない(51%・415名)

③科学やメディアによる大麻の肯定的な報告や描写(29%・234名)

④自然由来のものを好むため(21%・170名)

⑤医療従事者など信頼できる人から薦められた(17%・136名)

⑥今までの治療がうまくいかず、最後の手段として(16%・127名)

⑦好奇心・その他(16%・127名)

ここでは上位2つについてピックアップし、ご紹介します。

病気や症状をコントロールするため

回答者から報告された疾患や症状は痛みてんかん、精神症状、がん、神経疾患、自閉症スペクトラム症、自己免疫疾患、頭痛、睡眠、QOLの低下、運動障害、消化器疾患、皮膚疾患など。

中でも多かったのは、てんかんなどの発作(21%・171名)、痛み(19%・157名)、精神症状(12%・99名)でした。

「使ってみたらライム病の症状がよくなって、不安や胃腸の問題も軽減された」など、試してみることで効果を実感し、使用を続けるようになったという声が多くみられていました。

従来の治療が効かない、あるいはその副作用に耐えられない

「どの薬も変形性関節症による症状をコントロールできず、状態は悪化するばかりでした」「発作を治すために、10年間で15回治療に失敗しました」など、多くの人が代替医療として大麻の使用に至ったと述べていました。

以下、てんかんと自閉症スペクトラム症を有する15歳の子どもを持つ親からの回答。

「発作を抑えるために処方された薬は全て効かず、ついには医師から手術を提案されました。もちろん子どもがよくなるなら何でもやりたかったけど、手術は想定外でした。そんな時、CBDオイルが有効だという情報が耳に入ったので、手術はせずにCBDを使用することにしたんです。開始からすぐに発作が少し減ったので、医師に監視してもらいながら徐々に使用量を増やしていき、今では55日間発作がみられていません。自閉症にも効果があるようで、文章で言葉を話せるようになり、前よりもたくさんコミュニケーションをとれるようになりました」

また、治療薬の副作用が耐え難いものであったため大麻の使用に至ったと報告した人も多くみられました。以下、強迫性障害を有する11歳の子どもを持つ親からの回答。

「子どもにSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を2種類試しました。1つ目では自殺願望が頻繁にみられるようになり、2つ目では逆に症状が悪化しました。医師は3つ目のSSRIを処方しようとしましたが、私たちはもうこれ以上子どもを苦しめたくないって思ったんです」

大麻の有効性

77%(624名)がポジティブな効果を報告。16%(127名)は「分からない」「まだ効果があるとは言えない」と述べ、7%(57名)は無回答でした。

ポジティブな効果として最も多かったのは身体症状の改善(55%・446名)で、次いでメンタルヘルスの改善(29%・232名)、QOLの向上(14%・116名)、処方薬・通院回数の減少(12%・93名)となりました。

身体症状の改善

特に痛みにおいて報告され(28%・227名)、他にもてんかん発作(18%・146名)、睡眠(18%・144名)、運動症状(9%・73名)、消化器症状(8%・66名)、炎症の軽減(4%・36名)、頭痛・偏頭痛(4%・36名)の改善などが挙げられました。

33%(267名)が同時に複数の身体症状が改善したことを報告し、その数の平均は2.8となりました。

例えば、難治性てんかんを有する20歳の娘を持つ親はこのように述べています。

「発作がコントロールされるだけでなく、睡眠、食欲、筋緊張、胃腸の問題など、あらゆることが改善しました」

メンタルヘルスの改善

メンタルヘルスの改善として回答が多かったのは不安の軽減(22%・180名)、気分の改善(11%・88名)、認知機能の向上(8%・61名)、コミュニケーション能力の改善(7%・58名)、エネルギーの増加(5%・41名)、自傷や攻撃性などの問題行動の減少(5%・39名)でした。

例えば、うつ病と不安障害を有する63歳の男性は「集中できるし、タスクも思い出せるし、整理整頓もちゃんとできるようになりました」と回答。

メンタルヘルスにおいても、20%(158名)が同時に複数の症状を改善したことが報告され、その数の平均は2.8となりました。

以下、自閉症スペクトラム症を有する5歳の子どもを持つ親の回答。

「使用開始からすぐに自傷行為がなくなり、怒りを爆発させるようなこともなくなりました。話せなかった言葉も今では話せるようになってきていて、言ったとおりのこともできるようになったんです。パニックを起こさず変化に対応できるようにもなったし、社会性が劇的に向上しました。今では澄んだ目をしていて、笑顔もみられます」

QOLの向上

大きく分けて「幸福感の向上」「日常生活機能の向上」といった2種類の回答があり、これらが合わさり「QOLの向上」としてカテゴリー分けされました。

幸福感の向上としては具体的に「希望をもてるようになった」「家庭生活を楽しめるようになった」「よく笑うようになった」などの回答がみられました。

日常生活機能の改善としては、例えば52歳の多発性硬化症の女性は「CBDのおかげでよく眠れるようになり、1日2回軽い運動やストレッチもできるようになったし、歩行や外出も楽になりました」と回答。

また55歳のライム病の女性は「こんな簡単に生活の質を改善できるのであれば、私のような病気の人でも、生産性のある社会の一員として復帰できますね」と回答していました。

処方薬・通院回数の減少

減量した処方薬として主に報告されたのはオピオイド(2%・13名)、抗けいれん薬(1%・8名)でした。「処方薬をやめることができ、不安も軽減し、よく眠れるようになりました」「抗てんかん薬をやめられたおかげで、頭のぼんやり感がなくなって気分も良くなりました」といった声も。

以下、外傷によりパーキンソニズムを発症した46歳の女性の家族の回答。

「CBDオイルを使用するようになってから、ヒドロモルフォン(オピオイド)の1日投与量を16mgから2mgに減らすことができました。ヒドロモルフォンが少量になったことで、彼女はかなり調子がよさそうです。さらにバクロフェンの髄注(痙縮を和らげる薬を直接脊髄に注入する治療)も1200μgから853μgに減らすことができたんです。痙縮も少なくなって、痛みはなおさらよくなったみたいです」

大麻使用にあたっての課題・問題点

半数以上が「特に問題はない」と回答(59%・478名)し、残りの41%(330名)が何らかの課題や問題点について指摘していました。

具体的内容は副作用(16%・130名)、情報やサポートの不足(16%・127名)、コストが高い(12%・97名)、法律への懸念(10%・81名)、入手困難(7%・54名)、不十分な効果(6%・46名)、社会的スティグマ(4%・31名)など。

副作用

全部で62種類の副作用が報告され、特に多かったのは眠気・疲労感(3%・24名)、多幸感(2%・13名)、頭がぼんやりする(1%・10名)、不安(1%・8名)、めまい(1%・8名)など。

この中の一部の回答者(2%・14名)は時間経過とともに改善したか、あるいは量を調節することにより解決したと述べていました。

ほとんどが上記のような軽度から中程度のものでしたが、多発性硬化症の38歳男性からは以下のような報告も。

9ヶ月間THCで加療してきましたが、身体が動かなくなって精神病のような症状が出現し、入院となりました。今でも気力がなく、やる気も起きません」

情報やサポート不足

正しい用法・用量が分からない(9%・72名)、適切な製品が分からない(3%・28名)、医療従事者の知識やサポートの不足(5%・38名)などが挙げられていました。

レノックス・ガストー症候群の13歳の息子を持つ親は、以下のように回答。

「鎮静が必要な検査や治療が必要になった場合に、大麻製品の使用量をどのようにすべきかとか、そういう部分で医師からサポートを得られません。それが神経系やてんかんの専門医だとしてもです。”いざ”という場面に出くわした時に判断がつかなくなります。親としては試行錯誤しながら子どもの状態やCBDの効き目を観察し、正確に記録することが大切ですね」

コストが高い

「もし(大麻の)オイルがもう少し安ければ、本格的に治療に使用しています」「保険適応にしてくれれば、もっと生活の質がよくなるのに」など、大麻製品の価格の高さを指摘する声がみられていました。

法律への懸念

「(大麻の)オイルは息子を救ってくれました。けど、法律の不確かさが心配ですよね。州レベルではなく、全米で合法になって欲しいです」「抜き打ちで薬物検査されたら解雇されるかもしれない」などといった回答がみられました。

CBDオイルがないと生活に支障をきたすため、海外旅行に行く際に国が制限されるといった声も。

入手困難

回答者の中には医療用大麻が違法である州の住民もいました。

てんかんに苦しむ14歳の子どもを持つ親は以下のように回答。

「もし私たちが大麻が合法な州に住み、安全に大麻製品を入手できれば、息子の発作をもっとちゃんとコントロールすることができると確信しています。郵便番号が違うだけで、それをできる人とできない人がいるなんて不条理だと思います」

不十分な効果

「息子のために使用し始めましたが、8ヶ月経っても効果がみられていません」「普段は効いている感じがありますが、痛みが強い時にはほとんど効果がありません」といった回答がみられました。

また「使用2日目で、学校において異常な破壊行動や攻撃性がみられました」など、症状の悪化や問題行動の出現を報告した人も。

社会的スティグマ

「大麻で治療しているって言ったら、知り合いがどう反応するか分からない。受け入れてもらえる気がしないです」など、医療従事者や周囲の人に医療用大麻の使用について話すことをためらったり、それに伴い孤独を感じているような回答がみられました。

「大麻で治療しようと決断するまでに、1年以上かかりました」など、スティグマによりなかなか治療に踏み出せなかったという回答も。

「私は看護師なんですが、大麻や代替医療に興味があることを公で言えないのが辛いです。キャリアや雇用に悪影響がでないか心配ですし」といった声もみられました。

慢性疼痛を有する41歳の女性からはこのような回答も。

「小さい子どもが2人いるんですけど、周囲の人たちは私が大麻製品を使用していることを悪い目でみています。親として、こういった製品を使うのは厳しさを感じます」

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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