ニュージャージー州、警官に対する大麻検査が原則不要に

2021年1月に嗜好用大麻を合法化し、2022年4月より小売店での販売を開始した米ニュージャージー州。

嗜好用大麻の販売開始と同時に、司法長官であるマシュー・プラトキン氏はあるメモを発表。その内容は「州法に従い、勤務時間外に大麻を使用したかどうかを理由とし、いかなる警官に対しても不利益な処分を行うことはできない」というものでした。

嗜好用大麻を合法化している他の州では、法執行機関に所属する者の大麻使用は勤務時間外であっても認められていないため、この発表に対し反発する人も出ていました。

この流れの中でニュージャージー州の司法長官は最近、法執行機関に対する薬物検査方針の最新改訂版を発表。これによれば、州内の警官はほとんどの状況において、大麻のスクリーニング検査を受ける必要がなくなることになります。

検査を受ける必要性がある状況として、勤務中に大麻を使用した、あるいはその影響下にある状態と疑われた場合とありますが、この状況に対する明確な定義はありません。

また、連邦機関のタスクフォースに配属されている者、連邦政府により薬物検査が義務付けられているパイロットやトラック運転免許の取得者、薬物検査が要件として規定されている連邦機関の契約や助成金のもとで法執行機関に所属している者は、引き続き大麻のスクリーニング検査を受ける必要があります。

ここで問題となるのは、警官において「銃」が必需品となっていることです。連邦政府の規定では、大麻を使用していることが明らかとなった場合、たとえそれが医療用途であったとしても、銃を購入する資格を失うことになっています。嘘をついてそれが発覚した場合では、最大で禁固5年の刑に処されます。

ただしこの規定には例外も定められており、警官のように、政府機関から銃が配布された場合では、別の基準が適用されるようです。

つまり、今回発表された新たな方針により、基本的にニュージャージー州の警官は勤務に影響が認められない限り、勤務時間外の大麻使用が認められたとも言えます。

大麻と銃にまつわる動きは連邦議会においてもみられています。今年始め、共和党下院議員アレックス・ムーニー氏が医療用大麻患者における銃の所持・購入を認めるとした法案を提出。これは2019年にも同様の内容で提出されたものとなっています。

連邦地方裁判所の判事パトリック・ウィリック氏は今月始め、オクラホマ州で銃と大麻の所持が発覚した男性に対する起訴を棄却。ウィリック氏は「大麻使用者＝徳のない危険な人」と判断する政府の見解に対し、「大麻の使用のみでは暴力的・脅迫的行為は伴わず、大麻使用者が必然的にそのような人であると判断されることはない」と述べ、大麻使用者において銃の所持を禁止することは「違憲である」と明言しています。

このような流れの中、2023年7月より嗜好用大麻が合法となるメリーランド州でも、医療用大麻患者が銃を所持する権利を保護するための法案が提出され、現在審議が行われています。

また、軍隊においても、大麻の規定に関して動きがみられています。

アメリカ空軍では2022年9月から2024年9月までの間、入隊時に大麻の陽性反応が出ても即時失格とならず、90日後に再検査を受けられるとした寛大な試験プログラムが実施されています。空軍は2022年9月30日から12月31日の間で、早くも43名に対し「セカンドチャンス」を与えたと報告。このプログラムが適切であると判断されれば、陸軍、海軍においても同様の規定が定められる予定となっています。

これらに対する意見は賛否両論あり、また日本において銃規制は遠い話題ではありますが、これら全ての問題の根底にあるのは、日本でも根強くなっている「大麻へのスティグマ」にあると考えられます。