10月13日、麻由来の生理用ナプキンが膣内環境のバランスを保ち、膣炎などの感染予防に有益である可能性が中国の研究者らにより報告されました。
膣内には大腸と同じように様々な常在菌が存在し、「膣内フローラ」と呼ばれたりしています。正常であれば善玉菌である乳酸菌が多く存在し、膣内フローラのバランスは保たれています。ですが、このバランスが崩れると、細菌性膣炎などの感染を引き起こす原因となってしまいます。
膣内フローラのバランス維持に大切なのは乳酸菌、弱酸性、エストロゲン(女性ホルモンの1つ)です。このバランスを崩すものの1つとして月経があることから、適切な生理用ナプキンを選択できるようにしていくことが重要であると考えられています。
そこで注目されているのが麻(ヘンプ)由来の生理用ナプキンです。麻は日本でも古くから繊維として活用されてきた歴史があり、抗菌作用を有するとされています。
今回の研究では、妊娠可能な女性1002名を対象とし、麻由来のナプキンが月経による膣内環境の変化に及ぼす影響を3ヶ月に渡り検証。500名に麻ナプキン、502名に綿ナプキンを使用してもらい、比較が行われました(できる限り同じ条件で評価できるように、交換タイミングや清潔操作など、共通のルールが設けられました)。
評価は膣内分泌物を検査し、両者の間で膣内の清潔度、pH(弱酸性が保たれているか)、細菌の状態に有意差があるかどうかを分析することにより行われました。
その結果、麻ナプキン使用者は綿よりも膣内の清潔度、細菌の状態が優れていました。一方、膣内pHや細菌性腟炎の発症率(麻6.3% vs 綿6.6%)は両者の間で有意差が認められませんでした。
研究開始時の検査ですでに311名に膣炎疑いが認められていたため、この群と膣炎疑いのない691名との間においても検証が行われました。膣炎疑いのあるグループでは162名に麻ナプキン、149名に綿ナプキンを、膣炎疑いのないグループでは338名に麻ナプキン、353名に綿ナプキンを使用してもらうことで、比較を行いました。
膣炎疑いのあるグループでは麻と綿ナプキンの間で膣内細菌の状態に有意差が認められませんでしたが、膣炎疑いのないグループでは麻ナプキン使用者のほうが膣内細菌の状態が有意に良好となっていました。なお、膣炎疑いのあるグループでも疑いのないグループでも、膣の清潔度は麻ナプキン使用者のほうが良好となっていました。
これらの結果は、麻由来の生理用ナプキンには治療効果はないものの、月経時でも膣内の清潔や細菌の状態を保つことで、膣における感染を予防するのに有益である可能性を示しています。