フィンランド、大麻合法化について国会で議論へ

フィンランド、大麻合法化について国会で議論へ

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最近NATO(北大西洋条約機構)の加盟国となったことでも知られる北欧の国、フィンランド。日本とほとんど同じ広さの国ではありますが、国土の約7割が森であり、人口は2021年時点で約553万人。

そんなフィンランドには国民が法案を提出できるイニシアチブ制度があり、5万人以上の署名を集めることができれば、その法案について必ず国会で議論が行われることになっています。

フィンランドの活動家らは2022年10月、大麻の合法化を求めるイニシアチブを発案。これが大麻愛好家たちの祝日「4月20日」までに5万人以上の署名を集めたため、国会での議論が確定となりました。

このイニシアチブは年齢制限を条件として、大麻の使用、所持、栽培、製造、販売などを許可し、アルコールやたばこと同じように規制・合法化することを求めています。その他にも、大麻への課税、酩酊作用のある大麻と酩酊作用のない大麻を明確に定義して区別すること、少量の大麻の栽培・所持の犯罪歴を抹消することなどが内容として含まれています。

イニシアチブの主な目的は「大麻の禁止による害をなくすこと」と「人権と公衆衛生を保護・促進し、犯罪・汚職・暴力を減らし、子どもや若者を守る持続可能な規制システムを構築すること」とされています。

イニシアチブの中では以下のように、大麻の合法化を求める理由や根拠が数多く記載されています。

・大麻はカフェインよりも依存性が低く、たばこやアルコールよりも害が少ないと推定されている。

・違法であるがゆえに、未成年の大麻使用による健康被害を保護できない。

・大麻の禁止により、貧困層、有色人種、少数民族などが不釣り合いに逮捕されている。大麻の合法化はこうした不平等を排除する。

・大麻の禁止は、物質使用障害(薬物依存症)の治療に対するアクセスを困難にしている。

・「大麻=ゲートウェイドラッグ(ハードドラッグの使用につながる物質)」という仮説には、ほとんど科学的根拠が存在しない。むしろ、大麻が違法であるがゆえに、他の違法薬物の入手ルートが作られていると考えられる。

・医療用大麻に対する医療従事者のスティグマを減らすことができる。

・大麻の禁止は、警察の労働力を大幅に浪費しており、かつ、大麻の入手を抑止する効果も乏しい。

・違法薬物の売買による資金は賄賂として用いられることがある。大麻の合法化は裏社会の収入を大幅に減らし、社会の汚職を減らす。

・新たな雇用と税収をもたらし、経済を活性化する。

国内で大麻の合法化を公に支持する唯一の政党「フィンランド緑の党(Finland’s Green Party)」に所属し、今回のイニシアチブ作成に携わったコエル・トーマス(Coel Thomas)氏は、Cannabis Health Newsの取材に対し、イニシアチブが主要政党から過半数の票を獲得する可能性は低いとする一方、以下のように語っています。

「今、フィンランドで会話が始まろうとしています。これは私の意見ですが、この会話の始まりが今後10年間で大麻の合法化につながる可能性が高いと思います」

なお、フィンランドでは2019年、大麻の非犯罪化を求めるイニシアチブで5万人の署名を集めましたが、2022年4月の国会で否決されています。

トーマス氏は、フィンランドの政治家で大麻の問題に対して公の立場を取る人はこれまでほとんどいなかったと言います。

「賛成派の政治家は票を失うことを恐れ、反対派の政治家は議論を失うことを恐れ、大麻について語ることを避けています」「公衆衛生当局はこれまで一度も大麻に対し賛成する立場も反対する立場もとっていないため、フィンランドでは今、興味深いことが起こっています。人々の考えを変えるためには、この問題に関して適切な言論活動が必要です」

「私たちは沈黙を破りました。大麻の禁止を支えているのは、その問題をめぐる沈黙です。禁止には真の議論がないため、一度禁止になってしまうと議論は有効ではなくなります」

フィンランド保健福祉研究所(Institute for Health and Welfare)による2022年の調査では、フィンランド成人の約30%が違法薬物の使用経験を認めています。その中で大麻は最も多く、1992年の6%から、2022年には29%と約5倍にまで増えています。回答者の53%が大麻の非犯罪化、56%が医療用大麻の合法化、24%が嗜好用大麻の合法化を支持し、この割合は増加傾向にあります(この調査は1992年から4年ごとに行われている。2022年の回答者は3,857名)。

フィンランドは2008年に医療用大麻を合法化。ただし、主に認められているのは多発性硬化症に対するサティベックスの処方です。サティベックスは他の治療で効果がなかった場合の最終手段として考えられていることから、多くの医師はこの処方に抵抗を示しているとのこと。加えて、サティベックスは保険適用ではなく、10mlx3本で650ユーロ(約98,000円)もの高いコストがかかります。そのため、実際の使用者は約250名程度となっています。

フィンランドでCBDは合法ですが、日本でも2022年3月から指定薬物となったHHCに関しては、2023年1月より製造、輸入、販売、譲渡、保管が禁止されています。

Kansalaisaloitepalvelu「Kannabis lailliseksi, säännellyksi ja verolle」https://www.kansalaisaloite.fi/fi/aloite/11377

Cannabis Health News「“We’ve broken the silence” – Finland to debate legalisation of cannabis」https://cannabishealthnews.co.uk/2023/04/27/weve-broken-the-silence-finland-debate-legalisation-cannabis/

Yle「Majority in Finland favour cannabis decriminalisation, THL survey finds」https://yle.fi/a/74-20027123

Yle「Finland bans sale of ‘legal cannabis’ HHC products」https://yle.fi/a/74-20026533

The Cannigma「Is weed legal in Finland?」https://cannigma.com/regulation/cannabis-laws-finland/

Scandification Magazine「Is weed legal in Finland? Everything you need to know about marijuana in Finland」https://scandification.com/is-weed-legal-in-finland-marijuana-laws-in-finland/

廣橋 大

精神病院に勤める現役看護師。2021年初頭より大麻使用罪造設に向けた動きが出たことをきっかけに、麻に関する情報発信をするようになる。「Smoker’s Story Project」インタビュアー。

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