欧州医薬品庁が大麻の花の科学的データや論文の提出を求める

欧州医薬品庁（EMA：European Medicines Agency）のハーブ医薬品委員会（HMPC：Committee on Herbal Medicinal Products）は、2023年2月15日〜5月14日にかけ、医療従事者、製薬業界、政府機関、患者などに対し、大麻の花の医療活用に関する科学的データや学術論文の提出を求めています。

これらのデータは「EUハーブ・モノグラム」及び「EUリストエントリー」に大麻の花を登録するために用いられます。「EUハーブ・モノグラム」及び「EUリストエントリー」とは、利用可能なあらゆるデータをもとに、医療効果のあるハーブ及び生薬製剤の安全性と有効性に関する欧州医薬品庁の科学的見識を記載したもの。EU各国の事業者はハーブ製品の販売許可を所轄官庁に申請する際、これらのデータを参照にすることが可能となります。

ハーブ医薬品委員会が今回求めているデータは「大麻の花及びその生薬製剤」のみに限定され、単離した物質（カンナビノイドやテルペンなど）や抽出物などは含まれていません。

非営利団体「スペイン医療用大麻観測所（OECM：Observatorio Español del Cannabis Medicinal）」の代表であり、「カンナビノイド医薬品国際連合（IACM：International Association of Cannabinoid Medicines）」の患者評議会議長を務めるカローラ・ペレス（Carola Pérez）氏は、Cannabis Health Newsの取材に対し、「これは大きな一歩だと思います」とコメント。

「欧州医薬品庁のこのような動きは患者にとって非常に重要なものになるでしょう。これがうまくいけば、大麻の潜在的な薬効に大麻の花が役割を果たしていると考えられるようになります」と述べました。

さらに、ペレス氏は「患者、特に慢性的な痛みなどの症状を抱えて生きている人たちにとっては、オイル（大麻抽出物）だけではなく、気化できる花へのアクセスも必要です」と述べ、欧州医薬品庁によるガイダンスの確立が、EU諸国の大麻の花における規制に影響を及ぼす可能性に期待を表しました。

2022年6月、スペインは多発性効果症やがんに関連する痛み、てんかん、化学療法の副作用など限られた病状に対し、医師の許可のもとで医療用大麻の使用や購入を可能にする法案を可決。これによりスペイン医薬品・健康食品庁（AEMPS）は2022年末までに新たな規制を確立し、薬局などにおいて医療用大麻を流通させる予定となっていましたが、未だ実現されていません。

ペレス氏は、スペイン政府にとって大麻の問題は優先順位が低いとし、実際に医療用大麻が流通するのは2023年後半になるだろうと予測しています。そのため、現在でもスペインの患者は、エピディオレックスとサティベックス、THC0.2%以下のCBD製品にしかアクセスできない状況となっています。

スペイン医療用大麻観測所によれば、医療用大麻の合法化によりスペイン国内にいる20万人以上の人々が恩恵を受けると推定されています。

なお、スペインでは2月に代議院（下院）で嗜好用大麻を含む大麻の合法化法案について議論されましたが、否決されています。