CBDとテルペンの組み合わせが、新型コロナウイルスの治療に有効である可能性が示される

CBDとテルペンの組み合わせが新型コロナウイルスに有効である可能性

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2022年2月15日、ポルトガルの研究者らの基礎研究により、大麻由来成分であるCBD(カンナビジオール)テルペン(植物由来の精油)を組み合わせた製剤が、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の治療に有効である可能性が示されました。

この研究では大麻草、オレガノ、タイムマストキナからとれるテルペンを組み合わせた3種類の製剤(FT1、FT2、FT3)と、これらにそれぞれCBDを加えた製剤(FTC1、FTC2、FTC3)の計6種類の製剤を使用しています。さらに、CBDとテルペンの組み合わせによる相乗効果についても調べるため、濃度の低いテルペンとCBDを組み合わせた製剤(それぞれ1/10、1/20)も使用しています。

オレガノ(ハナハッカ)はヨーロッパの地中海を原産とするシソ科ハッカ属の多年草で、天然の抗生物質とも言われています。他にも抗炎症作用、抗酸化作用、鎮痛作用などの効果も認められています。

オレガノ

タイムマストキナ(スパニッシュマジョラム)はスペイン南部のイベリア半島に生息するシソ科の多年草で、抗炎症作用、抗菌作用、抗ウイルス作用、鎮痛作用、鎮静作用などを有すると言われています。

タイムマストキナの写真
タイムマストキナ

新型コロナウイルスは上気道症状だけでなく、消化器症状や皮膚症状、腎不全を引き起こすことがあります。このことから消化器や腎臓、皮膚も潜在的な感染標的として考えられています。そのためこの研究では、肺・皮膚・結腸・腎臓由来の細胞株を用いて、6種類の製剤によるSARS-CoV-2(アルファ株を使用)に対する抗ウイルス作用を評価しています。

抗ウイルス作用の評価は、ウイルスの減少量、ACE2受容体・TMPRSS2遺伝子・RdRp(RNA依存性RNAポリメラーゼ)・スパイクタンパク質をコードする遺伝子の発現量を測定することにより行われました。

SARS-CoV-2は、スパイクタンパクをヒト呼吸器上皮細胞にあるACE2(アンギオテンシン2)受容体に結合させることで細胞内に侵入し、感染・増殖することが分かっている。その際にTMPRSS2というタンパク分解酵素が利用される。RdRpはウイルスが増殖するのに必要な酵素。

その結果、細胞株により有効である製剤にばらつきがみられたものの、全体として全ての細胞株において抗ウイルス作用が認められました。特に結腸と肺由来の細胞においては、CBDとテルペンの相乗効果により、最も高い有効性が認められました。

研究者らはCBDとテルペンの組み合わせが、新型コロナウイルスの治療および治療の補助として活用できる可能性があり、さらなる研究を進めていくべきだとしています。その際、CBDに組み合わせるテルペンの選択が重要であると指摘しています。

また研究で使用された製剤は、新型コロナウイルスによるサイトカインストームを調節する可能性もあり、エンドカンナビノイドシステムの活性化が感染後の重症化を防ぐのに有望であるとも述べています。

研究者らは今後、これらの製剤の抗ウイルス作用の分子メカニズムについて研究を進めていく予定です。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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