新型コロナによるサイトカインストームの治療にCBD吸入薬が有効か

新型コロナによるサイトカインストームの治療にCBD吸入薬が有効か

- タイの基礎研究

新型コロナウイルスは呼吸器で感染を起こすことから、治療薬として肺に直接作用する吸入薬の開発に注目が集まっています。

これまでの研究から、大麻成分であるCBD(カンナビジオール)は新型コロナウイルス感染によるサイトカインストームを防ぎ、重症化を抑制する可能性が期待されています。

そこでタイの研究チームはCBDの吸入薬(CBD-MDI)を開発。そして検証の結果、CBD-MDIはステロイド吸入薬「ブデソニド」と同等の抗炎症作用を示し、新型コロナウイルスの治療薬として有効となる可能性があること今月17日に報告されました。

CBD-MDIはCBD、エタノール(CBD溶媒用)、HFA-134α(代替フロン)といった成分により構成され、内容量は10mlで200回分の使用が可能。1吸入につき0.25mgのCBDを摂取できるように設計されています(総含有量:50mg)。

まず、NR8383(ラット肺胞マクロファージ細胞株)やA549(ヒト肺腺癌細胞株)といった肺の細胞を用いてCBD-MDIの安全性を検証した結果、これらの細胞株の生存率は95%を超え、ほとんど害を及ぼさないことが示されました。また、これらの細胞株にCBD-MDIを使用することにより、炎症性サイトカインが誘導されることもありませんでした。

ただし、CBD-MDIと同用量で純粋なCBDのみをこれらの細胞株に使用すると毒性が示されたことも報告されました。なぜCBD-MDIでは毒性が低くなるのかは明らかにされませんでしたが、おそらくエタノールやHFA-134αなどの成分が関与している可能性があると述べられています。

続いて、新型コロナウイルススパイクタンパク質受容体結合ドメイン(S-RBD)やグラム陰性菌リポポリサッカライド(LPS)を使用することでNR8383、A549といった肺由来の細胞株に炎症を誘発させ、これらに対しCBD-MDIの有効性を検証。TNF-α、IL-1β、IL-6といった炎症性サイトカインが有意に減少し、この効果は気管支喘息に用いられるステロイド吸入薬「ブデソニド」と同程度となりました。

CBD-MDIは炎症後の治療として用いるのが最適であり、炎症誘発前では効果は不十分で、またCBD-MDI曝露後に細胞株を洗い流すと炎症が再燃する(CBDの効果がなくなると元に戻ってしまうため、ある程度使い続ける必要がある)ことも明らかとなりました。このCBDの抗炎症作用は、結合能は高くないながらも、CB2受容体への作用によりもたらされたと研究者らは述べています。

またこの研究では、PM2.5、ニコチン、コールタールといった大気汚染物質に対してもCBD-MDIの有効性を評価。その結果、CBD-MDIはこれらの汚染物質によって引き起こされた炎症も緩和することが示されました。

以上の結果から、研究者らは「CBD-MDIは肺由来の細胞に悪影響を及ぼすことなく使用することができ、ウイルス(S-RBD)や細菌(LPS)、大気汚染物質(PM2.5、ニコチン、コールタール)による炎症性サイトカインの産生を抑制した。CBD-MDIは新型コロナウイルス感染症によるサイトカインストームを緩和できる可能性がある。ただし今回の研究は試験管内のものであるため、今後もまだ研究が必要である」と述べています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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