2022年6月11日、大麻使用がC型肝炎ウイルス感染者の肥満リスクの低下と関連することがフランスの研究者らにより報告されました。
大麻は食欲を増進する作用があることで知られています。一方、一般人253名を対象としたアメリカの研究では、大麻使用がBMI(Body Mass Index)の低さと関連していたことが報告されており、このような報告は他にも存在しています。
※BMIとは?
肥満度を示す指数。
BMI=体重(kg)÷ {身長(m)の2乗}
18.5未満は痩せ、18.5〜25未満は標準、25以上は肥満と判断する。
食欲を増進しながらも肥満度が低くなるという矛盾。これにはカンナビノイド受容体を介した代謝率の上昇が関係していると考えられています。そのため、大麻や大麻に含まれる様々な成分(カンナビノイド、テルペンなど)が肥満や糖尿病などの代謝異常の治療として注目されてきています。
C型肝炎ウイルス感染者は肝機能障害に伴い、肥満やメタボリックシンドローム、高コレステロール血症や糖尿病などの代謝異常を合併するリスクが高くなります。よって今回の研究では、C型肝炎ウイルス感染者の体型に大麻が及ぼす影響について調査・分析が行われました。
対象となったのはフランスに住む慢性C型肝炎ウイルス感染者6348名で、このうち過去に大麻を使用したことのある人は20.4%(1292名)、現在も使用している人は12.3%(785名)、大麻を使用したことのない人は67.3%(4271名)でした。肥満の評価には、単純な肥満度を示すBMIと、中心性肥満やメタボリックシンドロームの診断に用いられる腹囲(ウエスト周囲径)のデータが使用されました。
その結果、大麻の使用歴が腹囲・BMIの低さと関連しており、特に現在も大麻を使用している人は使用したことのない人よりも中心性肥満(腹囲増加)のリスクが55%低く、肥満(BMI25以上)のリスクが73%低いことが明らかとなりました。
この結果を受けて研究者らは、大麻の使用はC型肝炎ウイルス感染後の代謝異常や他の肝疾患(脂肪肝など)の合併に対し間接的に有益となる可能性があると述べています。
なお、C型肝炎ウイルスの感染はのちに肝細胞がんを発症するリスクが高くなることで知られています。
2022年4月に公開されたアメリカの論文では、1億人を超える大規模なデータベースを分析した結果、大麻使用者は非使用者と比べて肥満である人が少なかっただけでなく、肝細胞がんになる可能性が55%低かったことが報告されています。