観光業の起爆剤になり得る「大麻ツーリズム」の北米の現状

観光業の起爆剤になり得る「大麻ツーリズム」の北米の現状

世界中で大麻の有用性が認められ、その使用者が拡がる中、大麻ツーリズムが新たな産業として注目を集め始めています。

ツアー会社、旅行代理店、宿泊施設、ラウンジ、フェス、レストランなど大麻を資源とした様々なビジネスの集客が考えられますが、合法化が起こったのが近年である事から、このビジネスに対してどんな企業が興味を示し、どこにニーズがあるのかなど、まだまだ業界としてはかなり未発達で、明らかになっていない事が沢山あります。

大麻ツーリズムとは、大麻の購入、消費、教育などを取り入れたレクリエーションやレジャーなどの事を指し、従来の観光の定番であるアドベンチャーツアー、スパ、料理教室、アウトドアレクリエーションなどの全てが大麻ツーリズムとしても運営できる可能性があります。

最近の大麻に関する英語の記事を読んでいると「ノーマライゼーション」という言葉を見かける事が多くなってきています。

ノーマライゼーション (normalization)とは、基準化や標準化といった意味があり、大麻が合法化されて以来、それまでは違法であった大麻が普通のもの(ノーマルなもの)になっているという意味でこの言葉が使われています。

そしてそのノーマライゼーションが進む事こそが、大麻ツーリズムという産業が誕生し、盛り上がる為の1つの要因であると考えられています。

大麻ツーリズムのエキスパートである「New Hights Cannabis」とガルフ大学のスーザン・デュペイ博士も、この大麻のノーマライゼーションと大麻ツーリズムの関係性について共同でリサーチを行い、旅行に出かける人の気持ちや期待、また休暇中に求める体験なども、ノーマライゼーションの進行が大きく影響すると述べています。

カナダの大麻ツーリズム

カナダの大麻会社で一番最初に大麻ツーリズムに参入したと考えられているのは「Canopy Growth」で、オンタリオ州のスミスフォールにある「Tweed ビジターセンター」が象徴的な存在と言えるでしょう。

かつてはハーシーズ・チョコレート(Hershey’s)の工場があった事で有名な場所にあり、本格的な栽培施設を備えるビジターセンターです。

現在はまだパンデミックの影響で一時的に閉鎖していますが、本物の大麻栽培施設を見学できたり、大麻の歴史を学べたりと人気の観光スポットとなっていました。

また「Aurora Cannabis」もアルバータ州のエドモントンにある巨大ショッピングモール「ウエスト・エドモントン・モール」にて「The Aurora Cannabis フラッグシップストア」を運営しており、店内のイベントスペースでは音楽やコメディショー、映画の上映会などが行われており、多くの人から好評を博しています。

この様な国内旅行の観光客の誘致に加え、最近では世界中で大麻に注目が集まっている事から、海外からの観光客を誘致する事もこれからのカナダの大麻ビジネスにおいては大きなポイントになると考えられています。

北米ではコロナのパンデミックがひと段落を見せる中、人々が一気に元の社会に戻ろうしており、長い間会えなかった人に会いに行ったりするなど、旅行や集まりを通してまた人と人との触れ合いが増えてきています。

そしてそれはレストラン、バー、スポーツ施設、レジャー施設などで今まで以上に人々がお金と時間を使う理由になっています。

これからの大麻ツーリズム

「New Hights Cannabis」とガルフ大学のスーザン・デュペイ博士のリサーチによると、大麻産業はワイン産業から学べる事があると述べられています。

ワインの場合、腕の良い生産者が多く住んでいる地域で、訪問者を受け入れる事ができる場所が産地として有名な地域になっていますが、大麻に関しても同じ事になる可能性があると述べています。

確かにカナダであればケロウナなどオカナガン地域が、アメリカであればメンドシノなどカリフォルニア辺りが有名な大麻の産地になっています。

同じ法則が日本でも当てはまるのであれば、山梨県などが大麻の名産地として有名になるのでしょうか?

またカンナビスはワインと同じ様に、食事の中にも取り込む事が可能で、有名シェフが振る舞う料理ツーリズムなどが提供できるという点においても似ていると述べられています。

「大麻ラウンジ」や、製造されている場所で直接販売を行う「ファームゲートストアー」などを運営するには、まだまだクリアしなければいけない法律的な問題があります。

製品が製造されている場所で直接購入する事ができる事が売りである「ファームゲートストアー」は、製造した製品を一度州政府に卸し、また販売するために買い戻す必要があります。

また、カナダが法律で公共の場所の室内での喫煙を規制している事から、オンタリオ州にある大麻ラウンジは野外での営業を余儀なくされたりしています。

この様に問題は散見されますが、カナダの隣国アメリカのカリフォルニア州、コロラド州、そしてネバダ州では大麻ツーリズムが経済の推進力となり得るという実績が示されています。

北米でパンデミック以前の様な活気を取り戻すためには、規制緩和を進め大麻ツーリズムという産業を推し進める事が、再び経済を押し動かす起爆剤になるのかも知れません。

Shinji

カナダ在住。大麻メディア兼大麻関連事業コンサルティングCJC Advisory Networkの創設者。同社は日本を拠点とするCBD企業と国際的なパートナーや投資家のネットワークとしても機能する。

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