今もなお流行が続く「新型コロナウイルス感染症」。この治療標的の1つとして注目されているのがメインプロテアーゼの阻害です。メインプロテアーゼは新型コロナウイルス感染後、ウイルスの複製や転写を媒介する重要な酵素であり、この酵素を阻害することは体内でウイルスが広がるのを阻止することを意味します。
今年4月に公開されたエジプトの研究では、インシリコ(コンピューター上における)スクリーニングにより、カンニプレンやCBGA(カンナビゲロール酸)などの大麻成分がメインプロテアーゼ阻害作用を有することが報告されました。さらにこの研究では、CBGAとCBC(カンナビクロメン)がメインプロテアーゼ阻害作用だけでなく、ACE2受容体阻害作用(新型ウイルス感染に対する予防効果)も有することが示されました。
そして今月19日、THCB(テトラヒドロカンナビブトール)やCBGAなどのいくつかのカンナビノイドがメインプロテアーゼ阻害作用を有していたことがアメリカの研究者らにより報告されました。
今回の研究はインシリコではなく、専用キットによる生化学アッセイと、分子間の相互作用や結合親和性などを評価する表面プラズモン共鳴法(SPR)により、カンナビノイドのメインプロテアーゼ阻害作用が検証されました。この検証はCBD(カンナビジオール)のような主要なカンナビノイドだけでなく、他の様々なマイナーカンナビノイドに対しても行われました。
最も高いメインプロテアーゼ阻害作用が認められたのはTHCBとCBGAで、それぞれ阻害率は81.0%、72.9%となっていました。その他のカンナビノイドの阻害率はCBD8.7%、CBDA(カンナビジオール酸)29.4%、CBC42.1%、CBG(カンナビゲロール)25.4%、CBN(カンナビノール)28.7%、CBL(カンナビシクロール)31.1%など。
CBD同様、THCA(テトラヒドロカンナビノール酸)やTHCV(テトラヒドロカンナビバリン)ではほとんど阻害作用が認められませんでした。THC(テトラヒドロカンナビノール)においては検証が行われていませんでしたが、その代謝産物である11-OH-THCでは阻害率が56.0%となっていました。
SPRによる検証はCBGとCBGA、CBDとCBDAにおいて行われました。その結果、脱炭酸したCBGやCBDよりも、酸性カンナビノイドであるCBGAやCBDAの方が高いメインプロテアーゼ阻害作用を有することが明らかとなりました。
今年1月には、CBGAとCBDAが新型コロナウイルス感染症を予防する可能性があることが報告されています。
また今回の研究は「メインプロテアーゼ」に焦点が置かれましたが、「サイトカインストームの抑制(抗炎症作用)」という点においては、新型コロナウイルスの治療としてCBDが有効である可能性が今年5月に報告されています。