2022年4月4日、精神活性作用をもたないカンナビノイドが新型コロナウイルスの侵入と複製を阻害する可能性を示した論文が、エジプトの研究者らにより公開されました。
この研究はin silico(コンピューターの中における)スクリーニングによるものです。化合物の情報をデーターベース化し、コンピューター上で仮想実験を行うことで、治療薬として優れた性質をもつ化合物を割り出すという研究です。
今回の研究では、新型コロナウイルスが体内に侵入する際に結合するACE2受容体と、ウイルスが体内で複製される際に関わる酵素であるメインプロテアーゼに対するカンナビノイドの有効性をスクリーニングしています。スクリーニングの対象となったのは、精神活性作用を有するTHC(テトラヒドロカンナビノール)を除いた、29種類のカンナビノイドでした。
その結果、ACE2受容体に対し最も高い親和性(新型コロナウイルスの侵入阻害作用)が認められたのはCBGA(カンナビゲロール酸)でした。次いでCBG(カンナビゲロール)、CBGAモノメチルエーテル、CBGVA(カンナビゲロバリン酸)、CBC(カンナビクロメン)、cannabifuran(カンナビフラン)に高い親和性が認められました。
メインプロテアーゼに対しては、canniprene(カンニプレン)が最も高い親和性(新型コロナウイルスの複製阻害作用)を示しました。CBGAモノメチルエーテル、CBC、CBGA、CBN(カンナビノール)メチルエーテル、cannflavin B(カンフラビンB)、CBND(カンナビノジオール)、CBNA(カンナビノール酸)にもやや高い親和性が認められました。
ACE2受容体とメインプロテアーゼの両方に対し親和性(ウイルスの侵入と複製を阻害する作用)を有していたのは、CBGA、CBGAモノメチルエーテル、CBCでした。
またこの研究ではSwissADMEを使った薬物動態の予測も行われました。その結果、最も高いウイルス複製阻害作用を示したカンニプレンに、優れた薬物動態プロファイルが認められました。このことから、カンニプレンは新型コロナウイルスの経口治療薬として有望な可能性があると研究者らは述べています。
※canniprene(カンニプレン)とは
大麻草のリーフ部分からとれる成分。抗炎症作用が示されている研究論文はあるが、ほとんど研究はされていない。
さらにCBGAやCBGに高いウイルス侵入阻害作用が認められたことから、これらのカンナビノイドを用いたうがい薬・洗口液や点鼻薬は、新型コロナウイルス感染の予防として有効な可能性があるとしています。
今年1月には米オレゴン州立大学の研究者らにより、CBGAとCBDAが新型コロナウイルスの感染を予防する可能性を示した論文が公開されています。