カンナビノイド作動薬、乳がん細胞に抗がん作用だけでなく、骨転移からの保護作用を示す

カンナビノイド作動薬、乳がんの抗がん作用に加え骨転移を抑える作用も

- タイにおける基礎研究

2022年5月5日、カンナビノイド(CB1・CB2)作動薬が乳がん細胞において抗がん作用だけでなく、骨転移からも保護する可能性を示した論文がタイの研究者らにより公開されました。

乳がんは女性に最も多く発症するがんです。がんは進行につれ転移することで知られていますが、乳がんではリンパ節、骨、肺に転移することが多いです。骨転移した乳がん細胞は、破骨細胞を活性化するとともに骨芽細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導し、骨量の減少や痛みを引き起こします。

※破骨細胞と骨芽細胞

丈夫な骨を保つため、骨では新陳代謝が行われる。その際、古くなった骨を破骨細胞が破壊・吸収し、骨芽細胞が新しい骨を形成する(リモデリング)。通常、破骨細胞と骨芽細胞の働きはバランスが保たれている。このバランスが崩れ、破骨細胞が優位になる疾患として骨粗鬆症がある。

この研究は、CB1作動薬(ACEA)とCB2作動薬(GW405833)が、ヒト乳がん細胞株(MDA-MB-231細胞)と骨芽細胞様細胞(UMR-106細胞)に及ぼす影響を調べた基礎研究です。

CB1・CB2作動薬はそれぞれ単独で乳がん細胞株に対し強い抗がん作用を示しましたが、併用することでより高い効果が認められました。なお、この作用はがん細胞の増殖を促進するたんぱく質であるNF-κBを減少させ、乳がん細胞をアポトーシス(細胞死)へ誘導することによりもたらされることが示されました。

またCB1・CB2作動薬はそれぞれ骨転移を抑制する作用も示しました。この作用においては、CB1・CB2作動薬の併用は相乗的には作用しませんでした。

乳がん細胞株は骨芽細胞様細胞の生存を阻害しましたが、CB2作動薬で前処理した骨芽細胞様細胞では、乳がん細胞株による悪影響が軽減されていました。これはCB1作動薬およびCB1・CB2作動薬の併用においては認められませんでした。

カンナビノイド作動薬は乳がん細胞株において抗がん作用を示し、転移を抑制することに加え、CB2作動薬では乳がん細胞から骨芽細胞を保護することが、今回の研究により示されました。

大麻に含まれるカンナビノイドは、カンナビノイド受容体に対しそれぞれ様々な形で作用し、医療効果をもたらします。その効果の中には、抗がん作用をもたらす可能性も含まれています。

2007年の研究では、THC(テトラヒドロカンナビノール)CBD(カンナビジオール)CBN(カンナビノール)CBG(カンナビゲロール)といったカンナビノイドにおいて、乳がん細胞株に対する抗がん作用が示されています。

廣橋 大

麻マガジンライター。看護師国家資格保有者。2021年より大麻の情報発信に携わる。

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