2022年4月23日、嗜好用大麻の合法化後における大麻の使用、他のドラッグの使用、薬物犯罪関連の変化について調査した論文が、アメリカの研究者らにより公開されました。
2016年に嗜好用大麻を合法化したカリフォルニア州と、現在も違法としているペンシルベニア州(医療用大麻は合法)を比較しながら、司法制度に関与する若者1216名を対象に調査が行われました。
その結果、嗜好用大麻の合法化後において、アルコールや大麻以外の薬物の使用率に有意な変化は認められませんでした。
また、カリフォルニア州よりもペンシルベニア州において、大麻の使用者や販売者が増加していることが示されました。
嗜好用大麻の合法化後、カリフォルニア州では喫煙者数の減少も報告されています。
この論文では、アメリカにおける州レベルの嗜好用大麻の合法化は、違法な州にも影響を及ぼすので、注意が必要だという結論を出しています。
ですが同時にこの結果は、限定された集団とはいえ、ゲートウェイ仮説を否定していることを意味しています。
ゲートウェイ仮説とは、依存性が低い薬物(ソフトドラッグ)の使用が入り口となり、その後依存度の高い薬物(ハードドラッグ)を使用するようになっていくという仮説です。
2010年の研究では、大麻における依存症への移行率は8.9%で、ソフトドラッグであることが立証されています。ちなみにニコチンでは67.5%、アルコールでは22.7%となっています。
ですがソフトドラッグであるがゆえに、大麻はゲートウェイドラッグであるとも言われ、日本で大麻を違法としている理由の1つとしても、よく挙げられています。
嗜好用大麻の合法化は、大麻へのアクセスを容易し、大麻の使用者を増加させるはずです。もしゲートウェイ仮説が正しければ、今回の論文において「嗜好用大麻が合法化したカリフォルニア州において、他の薬物の使用率が有意に増加していました」と報告されていなければなりません。ですが「他の薬物の使用率に有意な変化は認められなかった」と明記されています。
もちろん、この集団においてだけかもしれないですし、土地柄が関係している可能性も否定できません。
ですが2021年の研究においても、ワシントン州とコロラド州において、嗜好用大麻の合法化後、若者の覚醒剤、オピオイド、コカインの物質障害による入院率に有意な変化は認められなかったと報告されています。
これもゲートウェイ仮説の否定を意味していると考えられます。
先日報道されたニュースによると、厚生労働省は今年秋をメドに大麻取締法の改正を目指すとしています。
大麻の法的位置づけには様々な問題があるため、大いに議論がなされることでしょう。その際、「大麻はゲートウェイドラッグだから違法のままにするべきだ」などのような、偏った意見だけで議論がなされないことを、筆者は期待しています。