12月19日、オーストラリアにおいて一般開業医(GP:General Practitioner)の医療用大麻に対する認識や態度などを調査した結果が報告されました。
オーストラリアは2016年に医療用大麻を合法化。ほとんどの医療用大麻製品は薬品・医薬品行政局(TGA)で未登録薬品に分類されているため、患者に処方する際、医師はTGAに処方許可を申請する必要があります。
合法化して数年間は、制度の複雑さや製品の高価さなどにより医療用大麻の処方数はあまり多くありませんでしたが、ここ2年間で急増し、2022年時点で利用者数は10万人を超えるとされています。
今回の調査は2021年11月〜2022年2月にオンラインで実施されました。対象となったのはオーストラリアの一般開業医(以下、GPと表記)505名。GPは専門性を問わず総合的に診療を行う地域密着型の医師で、日本で言うところのかかりつけ医や家庭医に近い存在です。
過去3ヶ月以内に医療用大麻に関する相談を受けたGPは85.3%で、このような相談に対し「抵抗がない」と回答したのは52.3%でした。
「医療用大麻の処方をしたことがある」と回答したGPは21.8%。CBD主体の製品(71.8%)やTHCとCBDを組み合わせた製品(70.9%)の処方が多く、THC主体のものは少数(27.3%)となっていました。形態としてはオイル製剤(94.5%)が最も多く、それ以外にもドライフラワー(26.4%)、カプセル(10.9%)などが挙げられました。
医療用大麻の適応として最も多かったのはがん以外の慢性疼痛(92.7%)で、次いで不安(65.5%)、神経障害性疼痛(61.8%)。
GPにより医療用大麻の処方が支持された疾患・病状は終末期医療・緩和ケア(92.7%)、がん性疼痛(91.9%)、化学療法による悪心・嘔吐(86.7%)、難治性てんかん(83.8%)で多く、一方で不安(49.3%)、不眠(47.4%)、うつ病(37.2%)では支持される割合が半数以下となりました。
半数以上のGPが「処方までのプロセスが難しい」(62%)、「製品が高価である」(61.4%)と回答。「医療用大麻の知識が十分にある」と回答した人は22.6%と少数で、79%が「専門的な研修が必要」と考えていました。これらのことから、GPがまだ医療用大麻の処方にハードルを感じている様子が伺えます。
医療用大麻の懸念事項についても調査が実施され、THCに関しては車の運転への影響(75.2%)、発達中の脳への影響(71.1%)、認知機能障害(69.1%)、依存(64.4%)など。CBDに関しては発達中の脳への影響(55.4%)、他の薬との相互作用(51.9%)などが挙げられました。
一方、「副作用のリスクが高い」と回答した人は15.6%と少数。さらに半数以上が、医療用大麻はオピオイド(64.4%)、ベンゾジアゼピン(63.8%)、抗がん剤(57%)よりも危険ではないと認識していました。
この研究チームは2017年にも今回とほぼ同様の調査を実施しています。この時では、過去3ヶ月以内に医療用大麻に関する相談を受けたGPは61.5%(今回は85.3%)で、相談に対し「抵抗がない」と回答した人は28.8%(今回は52.3%)となっていました。
医療用大麻の合法化からおよそ6年。オーストラリアでは医療用大麻のニーズが増えると同時に、医師による医療用大麻の受け入れも進んでいるようです。