11月7日、オーストラリアの医療用大麻使用者において抗不安薬や抗うつ薬などの処方量が減少していたことが同国の研究者らにより報告されました。
オーストラリアでは2016年に医療用大麻が合法化され、幅広い疾患・症状に対し適応されています。
今回の研究は2020年1月1日〜2021年1月31日の間、オーストラリアに7箇所あるエメラルドクリニックに通院中の医療用大麻使用者を調査した前向き研究。2ヶ月ごとに医療用大麻の使用量、併用する処方薬の数、安全性についてフォローアップが行われました。
研究参加者は535名。女性が52%を占め、平均年齢は57.2歳。60.6%がオピオイド鎮痛薬、54.4%がロキソニンなどのN-SAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)、36.8%が抗うつ薬、34.6%がベンゾジアゼピン系薬(睡眠薬や抗不安薬など)を服用していました。
参加者のうち90%が2ヶ月、67%が4ヶ月、49%が6ヶ月、33%が8ヶ月のフォローアップを受けました。
約1年の期間中、医療用大麻による治療を中断したのは6%。理由として「効果がなかった」(50%)、「副作用」(16%)などが挙げられました。
大多数の人(89%)が大麻由来のオイル製品を使用。このうち66%がTHC:CBD=1:1のもの、20%がTHC主体のもの、5%がCBD主体のもの、9%がその他の比率のものを使用していました。1日の使用量はTHCが0.25〜181mg、CBDが0.15〜400mgの範囲で、THC約10mg、CBD約15mgの摂取が最も多くなっていました。
残りの11%はソフトジェルカプセルを使用し、1日の使用量はTHCが0.25〜10mg、CBDが1〜100mgとなっていました。
全体的に併用していた処方薬の量は、医療用大麻使用から6ヶ月後で平均9.8%、1年後で19.6%減少。
ベンゾジアゼピン系薬の使用量は6ヶ月で8.5%、1年で16.4%減少。
抗うつ薬は6ヶ月で10.16%、1年で19.3%減少。
N-SAIDsは6ヶ月で9.89%、1年で18.8%減少。
ただし大麻の合法化により使用量の減少がよく報告されているオピオイド鎮痛薬の使用量については、6ヶ月で7.5%減少しましたが、1年後では2.6%増加していました。
約1年間で310名から600件の副作用が報告されましたが、97%は軽度なものであり、忍容性が高いことが示されました。報告されたものとして多かったのはTHC主体のもので口渇、食欲増進、疲労感、THC:CBD=1:1のもので鎮静、口渇、めまい、CBD主体のもので鎮静、吐き気、注意力の低下などでした。
これらの結果に対し研究者らは、観察研究であり比較対象となるものがないことから、一概に医療用大麻が処方薬の使用量を減少させたとは断定できないが、さらなる調査を行う価値があることを示しているとしています。