香港でCBD起業家の逮捕が始まる
香港税関に押収された1460万香港ドル(約2億7000万円)相当のCBD製品(写真:GovHK)

香港でCBD起業家の逮捕が始まる

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中華人民共和国国務院(State Council of the People’s Republic of China)が919日に公開したプレスリリースによると、香港特別行政区の行政長官であるジョン・リー(李家超)氏がCBDについて言及。年内には法改正を行い、CBDを含む製品は来年初めに禁止される見通しであると述べました。

今年7月1日に香港特別行政区トップの行政長官に就任したジョン・リー氏は、前任のキャリー・ラム(林鄭月娥)氏よりも中国政府に対して忠誠心があり、強硬的であることが知られています。

キャリー・ラム氏の今回の表向きの不出馬理由は「家族の意向を重視した」と述べていますが、実際は中国共産党の指導部による更迭と言われています。

香港の行政長官は、民主派の支持者が多数派を占める香港市民と民主派を厳格に取り締まりたい中国共産党の両者のバランス感覚が求められる役職でしたが、ジョン・リー氏から発せられる言葉からはバランスを取る意向はないことが伝わってきます。香港の行政長官を決めるための選挙の出馬会見においても「忠誠」という言葉を使用しています。

忠誠は中国共産党に対してであり、ジョン・リー氏の就任によって香港の行政長官は香港市民の代表ではなく中国政府の一地方幹部であるという意味合いが強まりそうです。

また、香港の現在の選挙システムは、選挙委員の推薦無しでは立候補できない仕組みとなっています。そして、その選挙委員を選ぶための投票権は人口の0.1%の約7000人にしかありません。かつては民主派の人物もいましたが現在の選挙システムでは中国共産党に忠実な人物だけが立候補できるようになっています。

香港は「一国二制度」の原則のもと中国本土から名目上半独立を保っているため、CBD製品を禁止するという発表はCBDを厳しく禁じている中国本土に合わせた可能性も考えられます。

すでに始まっているCBD起業家の逮捕

香港のメディアHong Kong Free Pressは9月21日に「Hong Kong’s zero-tolerance approach to drugs leaves budding CBD industry high and dry」と題した記事を公開し、すでに香港において取り締まりが始まり、CBD起業家の夢が打ち砕かれている現状を伝えています。

CBDの効能を信じて、香港最大のCBDライフスタイルストアを率いるという野望を持ったCBD起業家が経営する店舗に警察官が突然現れて家宅捜索を行い、麻薬所持の疑いで逮捕。一夜にして、3年間続けてきた事業を閉鎖することに。

「警察官たちが私の商品を1つずつ棚から下ろすのを見て、頭が真っ白になった」「私がやったことはすべて無駄になってしまった」と夢破れた起業家の切ない想いを伝えると共に、この不幸を分かち合う仲間がたくさんできるだろうとHong Kong Free Pressは伝えています。

香港では大麻からCBDを抽出した際にTHCを完全に除去する必要がありますが、香港政府はTHCを完全に除去することは現実には不可能で、様々な分析方法の検出限界以下のTHCを含むことはほぼ必然的であると述べています。また、検査されたCBD製品からどれだけのTHCが検出されたかを公表したことはありません。

石井 竜馬

麻マガジン創設者兼編集長。標高1,000mの山の中で井戸を掘り、湧き水と共に家族で農的暮らし。珈琲焙煎士でもある。ヨガ歴20年。ワクワクするスタートアップにシードからレイターまで投資ラウンド問わず投資したいため、起業家との出会い募集中。

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